真空管 6W-DH3S


 写真左から 756Z-DH36Z-DH3改6Z-DH3A6W-DH3S


 スーパーへテロダイン・ラジオの検波・増幅用の双2極3極管 75 は、 コンバータ管の 6A7 と同じ1933年ころに登場しました。 アメリカでは 6B6-G6SQ77B66AV6 と発展し、1947年ころには 75 は保守用品種に指定されています。

 75 が開発されたころのアメリカの高級ラジオのIFTにはセンタータップがあり、 両波整流のような検波回路が多く利用されていました。 そのため2極管が2組備えられました。

 ヨーロッパでは音声の検波と AVC 回路を別々の2極管で行わせた回路が多く見られ、 歪などの点で若干有利です。 わが国のラジオで採用されることは希ですが、DAVC を利用するときにも2組必要です。

 わが国では、75 の2組の2極管はどうせ並列に接続してしまうのだから 一つで十分という判断から2極管を一つ省略した 6Z-DH3 が 1948年に登場しました。 そのため4番ピンはどこにも利用されない遊びのピンです。 そのため、多くの回路では 756Z-DH3 は差し替えて使用できます。

 6Z-DH3 のトップに出ていた3極管のグリッドを4番ピンに接続し、 トップのグリッド・キャップを廃止してシングル・エンド型にしたのが 6Z-DH3A です。 こちらも 1948年の登場です。 6Z-DH3改 はグリッド・キャップと4番ピンをビニル線で接続した素人の改造品で、 756Z-DH36Z-DH3A のいずれにも差し替え可能です。

 わが国でもHi-Fiを重視する時代になると、6Z-DH3A をカソード・バイアスで使い 出力トランスの二次側から 6Z-DH3A のカソードに、 ネガティブ・フィード・バックをかけるようになります。 ところが 6Z-DH3A のように2極管と3極管のカソードが共通な球では ネガティブ・フィード・バックが原因で歪を生じます。 そこで、2極管と3極管のカソードを 分離した 6W-DH3S が 1956年に登場しました。 雑誌「電波技術(日本放送出版協会)」1956年10月号に広告が掲載されています。 6Z-DH3A との名前の違いについては、W は7本足、 SSUN 真空管を表しています。

 756Z-DH36Z-DH3A は6本足で UZ ソケット、 6W-DH3S は小型の7本足で Ut ソケット(スモール・サークル)が必要で, いずれの球も外部雑音を拾いやすいため、通常はシールド・ケースをかぶせて使用します。 蛇足ですが、大型の7本足の 6A6 などには UT ソケット(ラージ・サークル) が必要です。

 左の資料は 6W-DH3S の箱に同梱されていた資料です。 6AV6S12AV6S も同時期に開発されました。 SUN 真空管はこのあと、電池管の SF 管も製造しています。 ヨーロッパに EAC91 という 6AV6S と似た球がありますが、 ピン接続が異なるため挿し替えはできません。

(2003年2月2日初稿)
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