真空管 6W-DH3S
写真左から 75、6Z-DH3、6Z-DH3改、6Z-DH3A、
6W-DH3S
スーパーへテロダイン・ラジオの検波・増幅用の双2極3極管 75 は、
コンバータ管の 6A7 と同じ1933年ころに登場しました。
アメリカでは 6B6-G、6SQ7、7B6、
6AV6 と発展し、1947年ころには 75 は保守用品種に指定されています。
75 が開発されたころのアメリカの高級ラジオのIFTにはセンタータップがあり、
両波整流のような検波回路が多く利用されていました。
そのため2極管が2組備えられました。
ヨーロッパでは音声の検波と AVC 回路を別々の2極管で行わせた回路が多く見られ、
歪などの点で若干有利です。
わが国のラジオで採用されることは希ですが、DAVC を利用するときにも2組必要です。
わが国では、75 の2組の2極管はどうせ並列に接続してしまうのだから
一つで十分という判断から2極管を一つ省略した 6Z-DH3 が 1948年に登場しました。
そのため4番ピンはどこにも利用されない遊びのピンです。
そのため、多くの回路では 75 と 6Z-DH3 は差し替えて使用できます。
6Z-DH3 のトップに出ていた3極管のグリッドを4番ピンに接続し、
トップのグリッド・キャップを廃止してシングル・エンド型にしたのが 6Z-DH3A です。
こちらも 1948年の登場です。
6Z-DH3改 はグリッド・キャップと4番ピンをビニル線で接続した素人の改造品で、
75、6Z-DH3、6Z-DH3A のいずれにも差し替え可能です。
わが国でもHi-Fiを重視する時代になると、6Z-DH3A をカソード・バイアスで使い
出力トランスの二次側から 6Z-DH3A のカソードに、
ネガティブ・フィード・バックをかけるようになります。
ところが 6Z-DH3A のように2極管と3極管のカソードが共通な球では
ネガティブ・フィード・バックが原因で歪を生じます。
そこで、2極管と3極管のカソードを
分離した 6W-DH3S が 1956年に登場しました。
雑誌「電波技術(日本放送出版協会)」1956年10月号に広告が掲載されています。
6Z-DH3A との名前の違いについては、W は7本足、
S は SUN 真空管を表しています。
75、6Z-DH3、6Z-DH3A は6本足で UZ ソケット、
6W-DH3S は小型の7本足で Ut ソケット(スモール・サークル)が必要で,
いずれの球も外部雑音を拾いやすいため、通常はシールド・ケースをかぶせて使用します。
蛇足ですが、大型の7本足の 6A6 などには UT ソケット(ラージ・サークル)
が必要です。
左の資料は 6W-DH3S の箱に同梱されていた資料です。
6AV6S、12AV6S も同時期に開発されました。
SUN 真空管はこのあと、電池管の SF 管も製造しています。
ヨーロッパに EAC91 という 6AV6S と似た球がありますが、
ピン接続が異なるため挿し替えはできません。
(2003年2月2日初稿)
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