4球1ウェイ
4球3バンド・ポータブル
(自作)


写真左-前から、右-右横から

 BCLラジオ風の3バンド・ポータブルを作ってみました。


ケースと部品
 ケースの大きさは200x130x60H mm(リードP-1)、構成は基本的に4球ポータブルと同じです。 違いは3バンドであること、バンドスプレッド、簡易型BFOが付いているところです。

部品の配置
左の写真はケース後方から見ています。 右横にヘッドフォン・ジャックがあります。

試作モデル
 実は左の写真のような試作モデルでコイルのデータを取って、 ある程度目処は立ったのですが、 あまりに大いので計画を見直すことにしました。
3バンド・コイルパックの製作
 小型化を目指して、今回もFCZコイルを利用してコイルパックを製作することにしました。 設計では30MHzまでカバーするものを考えていたのですが、 思ったように発振してくれないため、次々とコイルを変更してテストしました。 結局周波数帯も大幅に変更となりました。

Aバンド:530-1,636kHz
ANTコイル(左の写真、基板向かって上段左) トランジスタラジオ用OSCコイル、 OSCコイル(同上段右) No.88コイルにリアクションコイルとして直径0.1mmポリウレタン線を60回巻。 (本来のリアクションコイルでは巻数が不足であることと耐圧の心配から) トリマ20pF(緑)、PC330pF(マイカ)。
ANTコイルとしては、バーアンテナの方が感度、選択度共に優れているようです。

Bバンド:3.5-7.3MHz
ANTコイル(同中段左) FCZ10S5、 OSCコイル(同中段右) FCZ10S1R9、ブースターコイル(同中段中) FCZ10S1R9。 トリマ10pF(桃)、PC3000pF(スチロール)。
FCZコイルを短波帯のOSCコイルとして利用する場合、リアクションコイルの巻数が少ないと 電池管では発振が起きづらいため、FCZ10S1R9を変則的に使っています。 また、短波帯ではバンド内の低い周波数で発振が弱くなったり 停止したりしますので、対策としてブースター・コイルを採用しました。 FCZ10S1R9と100pFの直列共振で3MHzよりやや低い周波数に同調し低域の発振を補強して、 バンド内の発振の強さを均一に保ちます。 中波のハイインピーダンスコイルの原理と似ています。

Cバンド:7.2-15.9MHz
ANTコイル(同下段左) FCZ10S21、 OSCコイル(同下段右 写真ではFCZ10S14、後に変更) FCZ10S5、 ブースターコイル(同下段中) FCZ10S3R5。 トリマ10pF、PC4700pF(ポリプロピレン)。
Bバンド同様の理由で、FCZ10S5を変則的に使っています。 それでも、B電池の電圧が低下すると真っ先に発振停止となりますので、 発振プレートである第2グリッドの供給電圧をこのバンドだけ高めに設定しました。 ANTコイル、OSCコイル、ブースター・コイルが互いに干渉するため、 トラッキング調整は中々難しく、これをいい加減に済ますとバンド内に無音の部分ができてしまいます。 全バンド上側ヘテロダインで、パディング・コンデンサをアース側に入れているのは、 ストレーを小さくするためのセオリーです。

 バンド切替えスイッチは、1セクション4回路3接点(アルプスM43)、 バリコンは 5-335pF 2連ポリバリコンで内蔵されているトリマは使いません。

 当初はコンバータ管に 1AB6 を使用するつもりでしたが、 1AC6 の方がCバンドで明らかに感度がいいため変更しました。 テストでは若干回路を変更して 1R5 を試してみましたが、 第2、第4グリッドに高めの電圧を供給すれば、 Cバンドでも 1AC6 同様に使えるようです。 いや、発振だけに限れば 1R5 が一番優れているかもしれません。

4球3バンド・ポータブルの回路図


4球3バンド・ポータブル定格表
型式4球スーパーへテロダイン
受信周波数A:530kHz-1,636kHz
B:3.5MHz-7.3MHz
C:7.2MHz-15.9MHz
中間周波数455kHz
使用真空管1AC6(テレフンケン)、1AJ4(フィリップス)、
1AH5(松下)、3C4(テレフンケン)
感度4球ポータブル程度
電気的出力100mW(推定)
電源乾電池 A 1.5V(単1型マンガン電池 x1)
B 72V(006P積層マンガン電池 x8)
消費電力A 1.5V-150mA B 72V-8.4mA
スピーカー5cm ダイナミック 8オーム 0.2W
形状215 x 160 x 90mm(ケース 200 x 130 x 60mm)
ロッドアンテナ830mm
重量0.81kg (電池なし)、1.21kg (電池付)
製作年月2009年12月

試聴
 Aバンドの中波放送、Bバンド、Cバンドの大電力国内・海外放送は昼間でも良く聞こえます。 BFOを働かせれば感度が上がりますので、3.5MHz、7MHzのアマチュア無線もなんとか聞こえます。 しかし結論から言えば、ロッドアンテナだけでは短波帯は完全に感度不足です。 まるで、2バンド5球スーパーのアンテナ線が外れた状態のようです。

 5m程度のビニル線アンテナをクリップでロッドアンテナに接続すれば、 ST管の5球スーパーに負けないほどの感度があります。 スプレッド・バリコンは局部発振側にだけ入れてありますが、効果は絶妙で3.5MHz帯-約10kHz、 7MHz帯-約90kHz程度の細かな調整ができSSBの復調も容易です。 電池電源ですから音量は望めませんが、ハム音は皆無で音質も悪くありません。 選択度もまずまずですので、もう少し利得が高かったら実用機となったのに残念です。

 簡易BFOはIF増幅管のプレートからコントロール・グリッドに微小容量で正帰還を掛けて発振させます。 途中にVRが入っている奇妙な回路ですが、電池電圧の変化で発振が強すぎたり止まったりといった問題に 対応すべく考案しました。 VRを回すとある点でいきなりポコンと発振してしまうため、 単なる切り替えスイッチでも良かったのかもしれません。

 ポータブルの宿命で電池電圧の影響は大きく、電圧降下と共に感度も低下していきます。 AバンドではA電池0.9V、B電池35Vくらいまで電圧が下がってもローカル局は良く聞こえますが、 Bバンド、CバンドではA電池1.2V、B電池50Vくらいまで電圧が下がったところで、 電波の弱い局は聞こえなくなります。 これはA電池、B電池電圧の低下でコンバータ管の発振が弱まって、感度が大幅に落ちてしまう ことが原因だと思います。 短波ラジオには90VのB電池が使われることが多いのも、このあたりの事情からでしょう。

ダイヤル
 ダイヤルはバーニアダイヤルの目盛り板を外し、代わりにCD−Rパッケージに 入っていた透明な保護カバーを取り付けました。 カバーの裏側に目盛りを書いた紙を貼り付けてあります。 ダイヤルの減速比は8:1で、スプレッド・ダイヤルを使わなくても短波放送の同調は容易です。

ダイヤル目盛のデータは次の通りです。
0 22.6 35.6 46.0 54.4 62.3 70.2 80.3 89.7 100
MHz (7.2) 8 9 10 11 12 13 14 15 (15.9)

0 5.3 24.6 37.2 47.6 58.1 67.8 77.8 90.0 100
MHz (3.4) 3.5 4.0 4.5 5.0 5.5 6.0 6.5 7.0 (7.3)

0 17.9 33.3 43.5 51.7 59.1 65.8 72.2 78.4 84.1 90.6 96.6 100
kHz 530 600 700 800 900 1,000 1,100 1,200 1,300 1,400 1,500 1,600 (1,636)

(2009年12月23日初稿) Reset inserted by FC2 system