4球1ウェイ
4球ポータブル
(自作)


写真左-前から、右-後ろから
電池管は左から1AB6、3C4、1AH5、後列1AJ4

 カセット・テープが10本入るケースで4球ポータブルをつくりました。 回路は 松下から発表された4球1ウェイの回路 を基本にしています。 このバリコンの配置はシャシを固定する役割も果たしています。

 自分で部品を用意する場合、コイルとバリコンをどうしたらいいかが大きな問題です。
 8-205pF、9-92pFのトランジスタ・ラジオ用親子バリコンと ゲルマラジオ用バーアンテナ・コイルPA−63R(公称 360μH)、 それにNo.88コイルの組み合わせで 何とかトラッキング(ラジオの調整の一種)は取れましたが、残念ながら放送波の 低いほう(640kHz以下)はカバーできませんでした。もう少し容量の大きいバリコンに 変更するかANTコイルとOSCコイルのインダクタンスを もっと大きいものに変更する必要がありそうです。

 なお1AB6にOSCコイルとしてNo.88コイルを使用すると、 周波数の低い方で発振が停止してしまいます。 第1グリッド抵抗を47kΩとすれば使用できますが、 発振は弱くなり感度が落ちますので、 リアクション・コイルとして0.1ミリ径のポリウレタン線を60回巻き、 元のコイルのプレート側は遊ばせて使用することにしました。 余談ですが、1AB6の第1グリッド抵抗の定格は27kΩで、 発振部のgmが600マイクロ・モー、 6BE6の7,250マイクロ・モーと比べて一桁小さく、同じ電池管の1R5の 1,200マイクロ・モーの半分しかありませんので、 発振コイルに要求する条件がきびしいようです。


4球ポータブル型定格表
型式4球スーパーへテロダイン
受信周波数640kHz-1,805kHz(実測)
中間周波数455kHz
使用真空管1AB6/DK96(松下)、1AJ4/DF96(松下)、 1AH5/DAF96(松下)、3C4/DL96(松下)
感度並三以上5球スーパー以下
電気的出力100mW
電源乾電池 A 1.5V(単1型マンガン電池 x1)、 B 72V(9Vマンガン電池006P x8)
消費電力A 1.5V-125mA B 72V-8.5mA
スピーカー5cm ダイナミック
形状175 x 160 x 67mm
重量0.79kg (電池なし)、1.19kg (電池付)
製作年月1998年9月

 このラジオに使用した 1AB6/DK961AJ4/DF961AH5/DAF963C4/DL96 は 松下が製造した球で、開発はオランダのフィリップス社です。 フィラメント電流50mAの 1AC61U41S53V4 を 半分の25mAにしたような球で、この回路のまま差し替えることも可能です。


写真左から1AB6/DK961AJ4/DF961AH5/DAF963C4/DL963Y4/DL971H31N3/DM71

松下のDシリーズ
 DK96DF96DAF96DL96 はオランダのフィリップス社が開発 したフィラメント電流 25mA の新シリーズ電池管です。 名前は欧州の約束事に従って"D"は 1.4V 電池管、"96"はフィラメント電流 25mA の 新シリーズ共通の番号です。 松下にとって最初のポータブル用電池管を発売するに当たってRETMA名を申請していましたが、 発売に間に合わなかったため欧州名のままDシリーズと名打って発売を開始しました。 そのためRETMA名が決まってからも、1AB6/DK961AJ4/DF961AH5/DAF963C4/DL96 という2つの名前を表記するマルチブランド球となりました。 (その後自社開発した出力管は 3Y4/DL97 を名乗りました。)

 数年後サブミニチュア型マジックアイ 1N3/DM71 発売に際しても同様な事情がありました。 1N3/DM71 に添付してあった説明書に次のような記述があります。
「現在欧州名 DM71 で発表しておりますが、RETMA名を申請中ですので 登録次第品種は RETMA名/DM71に変更いたしますから御注意ください。」
 写真の球本体には 1N3、箱には 1N3/DM71 と印刷してあります。 1N3/DM71 の足の長い球を 1M3/DM70 といい、 ソケットを用いずに直接はんだ付けします。 松下のポータブル CW-130 などに使用されています。

 なお、松下では1H3に関しては欧州名を名乗らなかったようです。


4球1ウェイの回路図

(2008年2月9日松下の電池管について追記)
(2005年3月1日改造・改訂)
(2001年3月16日初稿)
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