9球1ウェイ
9球2バンド高1中2受信機
(自作)



 構想十年、電池用のロクタル管 を9本使った高1中2受信機を作ってみました。 デザインはハリクラフターズもどき、 回路は思いつくまま実験しながら決めました。

 受信機の構成は次のとおり。

9球2バンド高1中2受信機のブロック図


[ RF ] 5球スーパーで夜弱い信号を聞こうとすると、 ザザザザッという雑音が一緒に聞こえます。 これが周波数変換用7極管から発生しているスーパー・ノイズです。 この雑音より信号を大きくして浮き上がらせ、 はっきり聞こえるようにする役割が高周波増幅RFです。 ダイアルの2箇所で同じ放送局が聞こえる、いわゆるイメージ混信も同時に改善します。

 RF によってどれだけ弱い信号を受信できるか決まりますので、 この受信機ではgm=2,000マイクロ・モーというロクタル電池管最高の 5極管 3E6 を使いました。 MGC(手動感度調節)は電池管では一般的なスクリーン電圧を調節する方法です。 意外ですがAGC 作用により、高周波増幅をつけても音量は大きくなりません。


[ MIX ] 短波帯で、受信信号の影響で周波数が勝手にずれてしまう 「引き込み」をなくすために、周波数変換管の働きを周波数混合管MIXと 局部発振管OSCに分けます。
 MIXには、無調整でも使える周波数変換用7極管 1LC6 を使いました。 スーパー・ノイズが多く、利得が少ないという欠点はRFIF2段で補えばいいのです。

[ OSC ]  ここではRF用5極管 3E6 を3極管接続にし、反結合型発振回路を採用しました。 発振強度は感度に大きく影響します。

[ IF ] 部品の都合から中間周波数は一般的な455kHzにしました。 短波帯で十分な選択度と必要な利得を得るためには2段増幅が必要です。 トリオのT-11などの2段増幅用のIFTはgmが2,000マイクロ・モー程度の球を 想定しており、しかも得られる利得を低めに抑えて安定方向に振っています。 RFとは異なりIFでいくら利得を稼いでも、 聞こえなかった信号が聞こえるようになったりはしませんので、 それでいいのです。

  3E61LN5 の2倍のフィラメント電力を消費する上に値段も高いので、 中間周波増幅は 1LN5 の2段増幅としました。 gmが800マイクロ・モーと低いため、高利得の1段用IFT トリオT-20を2組使います。
 Sメーターは1段目の1LN5 のプレート・スクリーン電流を読んでいます。 簡単で高感度、振り切れる心配もないのですが、針が反対に動くいわゆる逆ぶれ回路ですので、 メーターの天地を入れ替えて使用します。


[ DET/AF/AGC ] 2極5極管 1LD5 の2極部で、AM検波とAGCを受け持ちます。 BFO作動時にもAGC、Sメーターが使えるようにと、 IF 2段目のプレートから信号を取り出したのですが、 BFO からの漏れ電波が強く思惑が外れてしまいました。 しかし、AM の音質は悪くありません。  5極部の音声増幅は、抵抗結合で約100倍の増幅率を得ています。 2極3極管 1LH4 に差し替えも可能です。

 AGCのかけ方にも諸説ありますが大同小異ですので、 BCバンド受信で強い信号に対応すべく、 RFMIXIF2段のあわせて4段にわたってAGCをかけています。 なお、この受信機に使用した球は一般のラジオ球で、すべてシャープ・カットオフです。
 ON/OFFの代わりにVRを使ってAGC電圧を可変としてみましたが、 VRをいっぱいにしぼると各段のグリッドに入っている抵抗を通じて、 AGC回路に入っている高抵抗で自動的にグリッド・リーク・バイアスがかかります。 あたかも時定数のうんと小さいAGCに切り替えたかのようで、 完全なOFFの状態は作れませんでした。

 カソード・バイアスを利用している6BA6 などでは、 そういった現象は起こりませんが、コンバータ管6BE6 などでは 同様の現象が起こります。 AGCをかけない6BE6 の第3グリッドに1MΩ程度の抵抗を入れるのは、 強い信号でグリッド・リーク・バイアスを働かせるためです。

[ DET ] SSBやCWの復調用に7極管 1LA6 による グリッド検波にBFOの組合せを試してみました。 並四にならってスクリーン電圧を25V前後に、プレート電圧は35V以上になるように調整しました。 設計の問題でしょうが、2極管検波+BFO との差はあまり感じられません。

[ BFO ] 1LN5 による反結合型としました。 BFOコイルは科学教材社のものですが、gm の低い電池管では発振が起こりづらいようです。

[PA] 出力管にはビーム管 3LF4 を選びました。 本格的な受信機ではありませんので、 B電圧の一部を抵抗でバイアス電圧に振り分ける安易な方式にしました。


 受信機の性格を決定するコイル・パックには、 トリオKRC-2Bという小型の高周波増幅付2バンド・コイルパックを使いました。 仕様はBC 535-1,605kHz、SW 3.5-10MHzでコンバーター管は 6BE6 を使用することが 前提になっています。 アルプスの430pF3連中型バリコンB−36とFM用3連バリコンをスプレッド用に 組み合わせました。

 OSCコイルにリアクション・コイルを巻けば電池管にも使えるだろう、 と安易に考えていたのがそもそもの間違いでした。 当初、OSCには 1LN5を使うつもりで少々多めに巻いたのですが、 発振はするものの、ストレーが桁違いに大きく発振周波数帯が大きくずれてしまいました。 コイルにもいろいろ細工はしてみたのですが、どうしてもトラッキングが取れません。
 そこで思い切ってOSCコイルを、使い慣れているNo.88コイルとFCZ10S7に変更しました。 PCもBCバンドの固定コンデンサを半固定コンデンサに変更して、微調整をやり易くしました。 しかしNo.88コイルはリアクション・コイルの巻き数が少ないようで、 さらに、同調回路のCが大きいためにコアのかなり抜けた位置で使用せざるを得ません。 そのため、gmの高い3E6を発振管として90Vのプレート電圧を与えてさえ発振強度が弱く、 周波数の低い方では発振が停止してしまいました。これは困りました、、、。

 そういえば、このホームページのゲストでも登場していただいている湯本さんから、 No.88コイルを使った電池管ラジオに、リアクションコイルを10回ほどコイルを巻き足したら 感度が良くなったという貴重な情報を以前もらったのを思い出しました。 実は自分でも9年ほど前の 12Vラジオ4球スーパー/No.4では、コイルを巻き足して使ったのですが、 最近は無改造コイル専門でうまくいかないのをコイルのせいにしていました。 とりあえずNo.88コイルに10回コイルを巻き足してみたところ、 全域に渡って発振強度が強くなりました。 欲張って20回コイルを巻き足してみたところ、さらに感度が良くなりましたので 今回はこれで乗り切ることにしました。
 一方のFCZコイルは電池管との組合せも悪くないようです。 なんにでも使える素晴らしいコイルです。


 ポータブルでは当然ですが、A電池、B電池のスイッチの接点が接近しているため、 ドライバーなどのタッチによる電池管のフィラメント切断事故を防ぐために、 乾電池のマイナス側にスイッチを入れています。
 少々大柄ですが、屋外での使用も考えています。 そこで、電池、ロッド・アンテナ、スピーカーを内蔵するか否か検討中です。 

 5mほどのビニル線アンテナをつないで使用してみました。 遠距離の放送局を聞くにはちょうどいいのですが、 ローカル局を聞くときはRFのボリュームをいっぱいに絞って減衰器として使用する 必要があります。 音質は予想に反して大変いいです。
 短波帯の周波数の低い方は感度が少し落ちますが、 7MHzのアマチュア無線には結構使えます。 分離もまずまずで、グリッド検波+BFO も聞きやすい音質です。
 もう少し時間をかけて細かいところをつめていこうと思っています。 今回はまずまずの"でき"と言えるでしょう。



9球2バンド高1中2受信機 暫定定格表
型式9球2バンド高1中2スーパーヘテロダイン
受信周波数500kHz-1,612kHz(暫定)、3.377MHz-9.501MHz(暫定)
中間周波数455kHz
使用真空管3E6 x2、1LN5 x3、1LA61LC61LD53LF4
感度TRIO 9R59 程度
電気的出力270mW(推定)
電源乾電池 A 1.2V( 単1型ニッケル水素電池x2)
B 90V(006P型ニッケル水素電池 x10)
消費電力A 1.5V-450mA(AM受信時)550mA(SSB受信時)
B 90V-12.4mA(AM受信時)12.8mA(SSB受信時)
スピーカー外部スピーカー
形状320 x 210 x 230mm (IDEAL SK-4)
重量3.84kg 電池なし   4.72kg 電池付
製作年月2003年7月



(2003年7月8日初稿)
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