12Vラジオ
4球FMラジオ
(自作)


写真左上-前から、右上-後ろから

 1956年のAMカーラジオ用12Vハイブリッド管の登場に続き、1958年ころには FMカーラジオ用にVHFまで使えるハイブリッド管が生まれました。 12DZ612EK6 などの5極管とコンバータ用3極5極管 12EC8 がそれです。 今回はこれらの真空管を使って簡単なFMラジオを作ってみました。


4球FMラジオ使用真空管一覧
ブロック品名種類ヒータ
(A)
Cp-g1
(pF)
内部抵抗
(Ω)
gm
(マイクロ・モー)
CO電圧
(V)
備考
コンバータ12EC85極部 mixer
3極部 osc
0.2250.02
1.7
750k
6k
2,000
4,700
-1.6
-2.2
-
IF112DZ6RCO5極管0.190.0525k 3,800-1012EK6類似
IF212EK6SCO5極管0.190.03650k 4,200-4VHF用
AF・PA12AL83極・
SCG4極管
0.55 5.7
12
13k
0.48k
1,000
15,000
増幅率13
Po=40mW
-
RL=800オーム
(注)RCO-リモート・カットオフ、SCO-シャープ・カットオフ、SCG-スペースチャージ・グリッド

 手持ちの定電圧電源の電流容量が最大2Aのため、上記の4球構成としました。 それでも起動時には2Aを超えてしまいます。

 左の写真は、抵抗・コンデンサ等の小物部品と配線材を除く全て。
 自動車用の12V真空管を使うメリットは、耐圧の低い半導体用の部品が使えること、 定電圧電源を利用すれば電源回路を省けること、感電の恐れが無いこと、 ヒーターもB電源も直流のためハムの心配が無いことです。 ただし、同調ハムが起きる可能性はあります。
 OSCコイルは1.6mmのスズメッキ線を7ピンmT管に7回巻の空芯。 できるだけコイル長を短くします。 タップはプレート側から4回のところ。 下側ヘテロダインの局部発振周波数65.3-79.3MHzを発振するようにコイルを調整します。 12EC8 は専用管ですので発振は比較的容易です。

 ANTコイルは1.6mmのスズメッキ線を7ピンmT管に3回巻の空芯。 リンクコイルは2回。 実際にアンテナ線を付けてコイルの長さを素手で伸縮してトラッキングを取りましたが、 かなり微妙な作業です。

 RFCとして1.0mmのスズメッキ線を細いプラスドライバーの先に20回巻、熱収縮チューブで 絶縁したものを7本用いました。
 バリコンのホコリ除けとダイヤル目盛板を兼ねて、3個で105円のタッパーを使ってみました。 使ったのは1個だけです。

 IFTは10年以上前、秋葉原のジャンク部品屋さんで仕入れた未使用品で10.7MHzレシオ検波用です。 どうやら山水電気のステレオなどに使われていたもののようです。 損失が比較的大きいようで、gmの低い 12AF612BL6 では 感度が低すぎて使えませんでした。 12BA612BD6 は論外です。
 糸掛けダイヤルの減速比は7:1です。 糸は今回も墨壷用(すみつぼよう)ナイロン糸を使いました。 糸の伸びを見込んで強めに張れば問題ないようです。

 ダイヤル数字の目盛が周波数の高い方で詰まっているのは、 バリコンと直列に入れた30pFのコンデンサの仕業(しわざ)です。 周波数変化範囲を狭くする目的で入れてあります。 周波数の指針は赤いビニルテープを矢印に切リ抜いてプーリに貼り付けました。

4球FMラジオ
型式4球スーパー
受信周波数74MHz-93MHz
使用真空管12EC8(SYLVANIA)、 12DZ6(RCA)、12EK6(RCA)、12AL8(GE)
感度ラジカセ程度
電気的出力40mW(12.6V時、推定)
電源11V-14V(DC)
消費電力12.6V x 1.2A
スピーカー外部スピーカー
形状200 x 150 x 140mm
重量0.65kg
製作年月2008年10月


4球FMラジオの回路

問題と調整
 このラジオには高周波増幅が無いためアンテナに触れたり動かしたり別のアンテナに 変えたりした場合に、 影響でアンテナコイルの同調周波数や発振周波数が変動し感度が低下する場合があります。 さらに局部発振の電波がアンテナから漏れて数m離れた他のFMラジオにも妨害が入ります。 市販FMラジオには、たとえ非同調でも高周波増幅が必ず採用されているのは これらの問題から逃れるためです。

 最初の設計ではレシオ検波だったのですが、やり方がまずかったためか満足な音が 出ませんでした。 数日間格闘したのですが、根負けしてスロープ検波を試してみたところ音声出力、 音質ともに好結果が得られましたので、こちらに変更しました。 スロープ検波は信号が強すぎると歪みますので、IF増幅の1段目の真空管を リモートカットオフの 12DZ6 にしてAGCを掛けましたが、 実際には 12EK612DZ612EA6 はどれを使っても大差ありません。

 12AL8 の4極部は 12K5 と同特性のスペースチャージ・グリッド管です。 以前 12K5 をグリッドリーク・バイアスで使ったところ歪が多くて気になったのですが、 今回シルバニアのマニュアルに掲載されている 12AL8 の回路で組んだところ、 歪も少なく音質も音量もまずまずでした。 どうやらその秘密は、普通より一桁大きな値のカップリング・コンデンサにあるようです。 2m程度のビニル線アンテナを付ければ、ローカルFM放送がよく聞こえます。
(2008年10月18日初稿)

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