マジック・アイ付
5球高1スーパー
(自作)
写真左-前方から 右-斜め上から
真空管
6R-DHV1
を使った 5球高1スーパーを作ってみました。
6R-DHV1
は税制対策で真空管を1本減らすために
6BA6
と
6AV6
を 1本にまとめたような真空管ですが、5極管のカソードとヒーターのピンを共用しているため、 使い方によってはハムを拾いやすいこと、 5極管にカソードバイアスが使えないため無信号時にプレート損失が最大定格を 超える心配があること、 モジュレーション・ハム防止のために必ずシールドケースを使用する必要があること、 などのネガティブな面があり、生い立ちからいってもラジオのセットメーカー専用の球です。 もっとも自作ラジオは当時も今も無税ですから、アマチュアが
6R-DHV1
を使う 理由はどこにもないのですが、いろいろな意味で人気のある球ですので 今回試しに使ってみました。
写真左から
6R-DHV1
、
6R-HV1
、
6R-DHV2
構成と回路
真空管の構成は、高周波増幅
6BA6
、周波数変換
6BE6
、 中間周波増幅・検波・低周波増幅
6R-DHV1
、 出力管
6V6-GT
、整流管
5Y3-GT
の5球で、この組み合わせを想定して
6R-DHV1
が開発されたといっても過言ではありません。 マジック・アイは税制面では真空管の数に入れませんが、販売面では数に入れていました。 ここでは入手が比較的容易な
6E5-M
を使ってみましたが、 その後ダイヤルとともに
テレフンケン
EM800
に変更しました。
6R-DHV1
の5極管にはカソードバイアスが使えませんが、 半固定バイアスとするのもおおごとですので、実際にはAVC電圧を利用します。 無信号時に発生する-0.8V程度のグリッド・リーク・バイアスと、 スクリーン電圧とプレート電圧を規定より若干下げることにより、 プレート損失を定格内に収めることができます。 また
6BA6
、
6BE6
、
6R-DHV1
のスクリーン回路を共通化し、 ブリーダー抵抗を入れてありますので、スクリーン電圧の変動が小さく、 AVCがよく効きます。
6R-DHV1
のヒーターにはトランスの単独巻き線から2本のビニル線をよって接続し、 シールドケースを使用し、 さらにマイクロフォニック対策としてソケットを小さなアルミ板に取り付け、 ゴムブッシュで浮かしてシャーシに固定してあります。
ピン接続と真空管の互換
配線図の不可解な真空管ソケットへの配線は、ピン接続の異なる球の挿し替えに、 できるだけ互換性を持たせた結果です。 高周波増幅管には
6BA6
と
6BJ6
、 出力管には
6V6-GT
とメタル管
6V6
、 整流管には直熱管
5Y3-GT
、メタル管
5T4
、傍熱管
5V4-G
、 6.3Vヒーターの
6AX5-GT
などをそのまま挿し替えて使用できます。 ただし、
5Y3-GT
以外の整流管ではB電圧が少し高目になります。
LEADの6球スーパー・シャシ
四角い2つの穴がIFTの取り付け穴で、一目でわかるまずい配置ですが、 試しにこれで組んでみました。 予想通りIF段の発振が起こり、なかなか発振が収まりません。 邪道ですがIFTの調整をずらすと発振は止まりました。
仕方ないので、もう一度分解して 真空管の穴をひとつつぶして直線的な配置に変更して組み直しました。 これで大丈夫です。 もともと6球用シャシを5球で使っていますから問題はありません。
6R-DHV1
の5極部は Cp-g が 0.006pF ですから十分小さな値ですが、 カソードバイアスが使えないため無信号時に必要以上にgmが高くなります。
6BD6
用の IFT
トリオのT-38
を 組み合わせたことも相まって、
6BA6
を使うとき以上に発振防止対策が必要です。
電源トランス(ZEBRA:田淵電機)と3連バリコン(シャープ)、 プーリは中古品、それ以外は未使用品を使っています。 IFTも汚れていますが未使用品です。
コイルにはミズホ通信の
再生付高1コイル
と、 秋葉原で購入した発振コイルを組みあわせて使ってみました。 再生コイルは当然使いません。 もともと
6D6
を想定したコイルですから、gm の高い
6BA6
との組み合わせ では発振気味になりやすく、対策に苦慮しました。
IFTにはトリオの帯域切換型T-38を使ってみました。 狭帯域から広帯域に切替えても、しゃべり中心のAM放送の番組では大した差はありません。 しかし音楽の再生では高音の伸びが実感できます。 (中央のロータリー・スイッチで切換)
その昔ラジオのダイヤルの指針として、信号に応じて発光部が一方向に 直線的に伸びるマジック・アイが使われたことがありました。 東洋無線が製造した
6E5-P
または
6M-E4
の名称を持つマジック・アイ がそれで、マジック・フィンガーとも呼ばれました。
松下(現パナソニック)のラジオには、プーリと共に半円を描くダイヤルの指針や 横行ダイヤルの指針としてマジック・フィンガーを使用したラジオが存在しました。 しかし大きなダイヤルスペースが必要で、筐体(きょうたい=ケース) の大きなラジオにしか使えません。
左の写真のように、簡略化して固定指針で文字盤が回転するダイヤルを試作してみました。 文字盤の直径は12cm。 ローカル局受信時、 グリッド電圧-9V、発光部全長30mm。
写真左は信号を受信していないとき。
グリッド電圧-0.8V、発光部長7mm。
マジック・アイ
EM800
(テレフンケン:1966年)
6E5-P
または
6M-E4
は希少品種で手に入りませんので、 ドイツ、テレフンケン社製の
EM800
を代役としました。 こちらも希少品種かもしれません。
構造は
EM84
、
EM87
、
6R-E13
に似ています。 これらのマジック・アイは棒状の発光部が上下から中心に向かって伸び、 棒状の光と光の隙間が閉じる構造になっていますが、
EM800
は LEDレベルメーターのように一方向に発光部が伸びてゆく構造になっています。
左の写真のような仕掛けになっています。
期待して試作したのですが、面白さは最初だけで機能的なメリットは感じません。
折からのラジオの小型化、低コスト化の流れもあり、マジック・フィンガーは 短命に終わりました。
5球高1スーパー
定格表
型式
5球高1中1スーパーヘテロダイン
受信周波数
527kHz-1,735kHz
使用真空管
6BA6
(松下)、
6BE6
(東芝)、
6R-DHV1
(東芝)、
6V6-GT
(ブライマー)、
5Y3-GT
(東芝)、
EM800
(テレフンケン)
感度
-
電気的出力
3W (推定)
電源
100VAC
消費電力
-
スピーカー
ダイナミック
形状
310x230x230H mm
重量
本体3.8kg
製作年月
2006年8月製作
2007年11月ダイヤル変更
2009年9月再びダイヤル変更
5球高1スーパー 回路図
(各部の電圧は無信号時)
今回糸かけダイヤルに、建築現場で使う墨つぼ用の0.8mmナイロン糸を 使ってみました。 正式なものに比べて初期の伸びが目立ちますが、一応実用になっています。
6R-DHV1
を使うにあたってはハムが心配でしたが、 無信号時にボリウムをいっぱいに上げても、コンバーター・ノイズが聞こえるだけで、 ハムは皆無です。 感度はバンド内全域でフラットな特性で、5球スーパーより高感度です。 妙な発振や同調ハムもなく、出力管
6V6-GT
の採用もあって、 ちょっと高級な音のするラジオです。
(2009年9月9日再びダイヤル変更に伴い一部改訂)
(2007年11月24日ダイヤル変更)
(2006年8月1日初稿)
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