2バンド4球スーパー
(自作)

 

下段のツマミは左から、ON/OFF 音量、BFO ピッチ、バンド切り替え、AGC/AGC OFF/BFO
Sメーター下のツマミはゼロ点調整


 コリンズ社の通信機の雰囲気を真似てみました。 デザインは遠く及びませんが、性能はさらに及びません。

構成と真空管
 基本は5球スーパー+BFOですが、複合管とダイオードを使って4球としました。

6BE6 / 周波数変換
6BA6 / 中間周波増幅
12AT7 / BFO・低周波増幅
6AS5 / 電力増幅

6AS535C5 とほぼ同特性で、 100V 前後のB電圧で十分な出力が得られます。
ダイヤル構造
 アイデアルのギヤーダイヤル MD-101 に似せた糸掛けダイヤルを作ってみました。 プーリは直径 50mm のポリバリコン用を改造、ドライブの軸はボリュームを改造したものに 延長シャフトを取り付けました。 薦めはしませんが、糸は墨つぼ用 0.8mm ナイロン糸。

 本物の MD-101 のエスカッションから模(かたど)りをした厚さ 2mm の透明アクリル板に、 扇形の紙をスティック糊で貼った上から黒色スプレーで塗装し、乾燥後に紙をはがしてでき上がり。

 目盛り板は回転工具を使って 1mm厚のプラスチック板から直径 82mm の円板を切り取り、 つまみを破壊して取り出した真鍮(しんちゅう)金具に取り付けました。 穴の大きさをそろえれば接着剤は不要です。
ダイヤル外観
 減速比 7.5:1。 糸は短く強く張っていますので、バックラッシュはかなり少ないと思います。

 ダイヤルの照明は 8V 電球2個を 6.3V で点灯しています。 昔からの定番の方法で、色合いも良く、電球の寿命も長くなります。

 目盛りは手描き、数字は活字の切り貼りで、2倍の大きさで作って 1/2 に縮小コピーしました。 ダイヤル針は黒の木綿糸です。 較正(こうせい)は BFO を455kHzに固定しておいて、ディジタル・ディップメーターの信号とゼロビートをとりました。

 購入以来一度も較正していないディップメーターを基準にするのは少々気が引けますが、 既知の電波を受信した限りでは目盛りは正確です。
2バンドコイル
 トリオの2バンドコイル 2B-B を使いました。 公称の受信周波数帯は中波 535-1605kHz と短波 3.5-10MHz です。 ANTコイル、OSCコイル共に短波コイル内部に可変ループが付いていて、 インダクタンスの調整が可能です。 OSCコイルにはシャシ側面に固定する金具が付いていましたが、配置の都合から 金具を製作してシャシ裏面に固定しました。

 中波用パディング・コンデンサとして 260pF のポリバリコン(中山電気)と 330pF のマイカをパラにして使ってみました。 説明書の記載では 430pFですが、実測 438.4pFで既定の周波数になりました。 短波用は 3000pF スチロール。
IFT / BFO
 IFT は松下の #1777K。 IFT-A はコイルとコイルの間隔が 14mm、IFT-B は 13mmで、同調容量は 120pF。 インピーダンス A:77kΩ B:50kΩ。
この IFT の下部には舌状の金具が2か所付いています。 21mm の丸穴をシャシに開け、その両脇に舌状の金具が貫通する穴を2つ開け (6mm 間隔で 2mm の穴を2つ開け、ヤスリで削ってひとつの穴にする)、 舌状の金具を穴に挿し込み、ラジオペンチで 45度 ねじって固定しました。 ぐらつくこともなく 20mm 角の IFT より作業は容易です。

 BFO の発振コイルにはトランジスタラジオ用 IFT の黒、周波数調整用には同じく ポリバリコンの発振側(82pF)を使用しました。
電源
トランスは近所のマルツ電波で仕入れました。

B電源用トランス TOYOZUM I TZ11-010A
1次側 E 0V-100V
2次側 0V-100V-110V-120V 10VA
静電シールド付

ヒータートランス TOYOZUM I HT62
1次側 0V-100V-110V
2次側 0V-5V-6.3V 2A
部品
出力トランスは東芝 T-230 3.2kΩ:8Ω

12AT7(松下)、6AS5 に使ったソケットは米国製でセンターピンのないタイプ。

Sメーターは20年前に買ったエレホビーのラジケータ。
パネル / シャシ
 パネルは 1mm 厚のアルミ。 今回は上部カバーを兼ねた補強が入ります。

 シャシには今回もリード P-11 を使いました。 シルバーの塗装が綺麗で強度は十分です。 採寸はすべて現物合わせで、確認のために何度も仮組みを繰り返しましたが、 やや狭いため部品の配置に苦労しました。 その他に裏ブタもあります。
上部カバーとスピーカー
 アルミニウム製L型アングルとアルミ板で上部カバーを組んでみました。 十分な強度はありますが、表面にナットが突き出ていてイマイチ。 まあ、ほこりよけとしては及第点で、スピーカーの音に共振したりすることはありません。
シャシ上面(配線前)
 ANTコイルのトリマは最後に調整するものですから、他の部品の陰にならないようにします。
シャシ上面(配線後)
 メンテナンスを考えて、高周波関係でないビニル線には遊びを持たせています。
シャシ内部(配線前)
 感電の恐れがある部品はすべて内部に配置ました。 最終的には底ブタも付けます。 見てのとおり手狭で、これも4球にした理由のひとつ。

 右から2番目のロータリースイッチは振動を与えるとノイズが出ましたのでチェンジ!
シャシ内部(配線後)
 配線方法はニアバイアース。 ヒーターと豆電球の配線は2本のビニル線をねじって、12AT7 の脇1点だけ接地しました。 B電源も平滑コンデンサ通過後のマイナス側をヒーターと同じ点に接地しました。 アンテナを接続せずに、ボリュームを最大にしてもハム音は聞こえません。

 ACコンセントの極性によっては同調ハムが発生しますが、 コンセントの極性を逆にすれば完全に収まります。


2バンド4球スーパー 定格表
型式4球スーパーヘテロダイン
受信周波数A.530-1,605kHz (516-1,650kHz)
B.3.5-10MHz (3.353-10.330MHz)
使用真空管6BE6(松下)、6BA6(松下)、 12AT7(松下)、6AS5(GE)
感度5球スーパー程度
電気的出力1.5W (推定)
電源100VAC
消費電力-
スピーカーダイナミック 10cm
形状300 x 210 x 210H mm(シャシ 300 x 180 x 70H mm リード P-11)
重量4kg
製作年月2012年5月


2バンド4球スーパー 回路図

調整と結果
 今回はトリオの2バンドコイル 2B-B を使用しました。 Aバンド・コイルは典型的なローインピーダンス型で、バンド内の高い周波数では高感度、 低い周波数ではやや劣ります。 当地は超強電界地域ですので、コンバータ管で歪んでしまわないように AGC は必須です。 AGC OFF もスイッチで選択できます。

 Bバンドをテストしてみると最低受信周波数は 3.520MHz でしたので、 OSCコイル内の可変ループを動かして 3.353MHz から受信できるようにしました。 配置を考えているときに悩んだのですが、OSCコイルはシャシに固定したままでは調整できません。 他方 ANTコイルも OSCコイルにあわせて調整しましたが、 こちらはシャシに固定したままで調整可能です。 Aバンド、Bバンド共、ほぼ説明書どおりの周波数に調整しましたが、 特に短波帯は高感度に仕上がりました。 ダイヤル目盛のデータは次の通りです。

0 4.5 19.5 34.5 44.5 52 59 65.5 71.5 78 83.5 88.5 94 100
kHz (516) 530 600 700 800 900 1,000 1,100 1,200 1,300 1,400 1,500 1,600 (1,630)

0 6 21 31.5 39.5 47 53.5 59 64 69.5 74 79 84 88.5 93.5 100
MHz (3.353) 3.5 4.0 4.5 5.0 5.5 6.0 6.5 7.0 7.5 8.0 8.5 9.0 9.5 10.0 (10.330)

 アマチュア無線は BFO とダイヤルを上手に操作すればそれほど混信もなく受信できます。 BFO 電圧は強すぎると感度が下がり弱すぎると音が歪んでしまいます。 試行錯誤の末 IFT のコールド側からIF 増幅管のグリッドに BFO 信号を入れて、 コンバータからの信号と一緒に増幅しています。 できれば BFO 電圧を低めにして、IF ゲインを調整した方が良い結果が得られると思います。 次回への課題とします。
(2012年5月27日初稿)
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