5球スーパー
(自作)



写真左上-前から、右上-メタル管、左下-G管、右下-GT管

 1989年ころ、嘉穂無線から4球スーパーのキット TU-896 が発売されました。 6BE6、6BA6、6AV6、6BM8 と整流にシリコン・ダイオードを使ったラジオで、 6BM8 の3極部は使用しない設計でした。

 このキットは都合2台製作しました。このうちの1台は設計を大幅に変更して、 メタル管、G管、GT管の3種類の球を挿し替えて使えるようにしました。 それがこの5球スーパーです。 下表の横列の真空管が挿し替えて使えることを確認しました。

 6A8-G は周波数変換管のパイオニア 6A7 のベースを 7ピン(Small 7-pin)から8ピン(Octal)に変更しただけの7極管で、 6A7 を引継いでアメリカの5球スーパーやオールバンド・ラジオに大変広く使われました。 しかし構造上の問題から、短波帯では局部発振が弱く大幅に感度が下がってしまいます。 そこで、そのまま挿し替えが可能で短波帯でも感度が下がらないように発振と混合を 分けた複合管、3極6極管の 6K8-G と3極7極管の 6J8-G が開発されました。 いずれも挿し替えると内部容量の違いなどからトラッキングが若干ずれますが、許容範囲内です。 6K8-G が一般的でしたが、スパートン(SPARTON)のラジオだったら 6J8-G と いうように、ラジオのセット・メーカーによって使い分けられていました。 なお、6D8-G はカーラジオ用に 6A8-G のヒーター電流を半分にした球です。

 キットのOSCコイルはタップド・ハートレー用のものですが、このコイルに1mm間隔をあけて リアクションコイルとしてポリウレタン線を50回巻き足してあります。 バリコンは輸出用のトランスレス・ラジオに良く使われた、 262pF/117pF の親子バリコンです。

 わが国ではあまりなじみのない球ですが、1940年代のアメリカや イギリスの3、4、5バンド・ラジオには、6K8-G、6K7-G、6Q7-G、6V6-G、5Z4-G の 組み合わせを多く見かけます。
 歴史的にはそれまでのS管(ナス管)に代わって1932年ころST管が登場、 1935年メタル管、1937年G管、1938年GT管、1939年ロクタル管、1940年mT管と 矢継ぎ早に新型管が登場しています。そのためアメリカのラジオでは、各種取り混ぜて 使用されていることも珍しくありません。


5球スーパーの球の互換性
.メタル管G管GT管
RF/IF増幅 6K7
6S7
6K7-G, 6S7-G
6U7-G
6K7-GT
周波数変換 6A8
6K8
6A8-G, 6D8-G
6K8-G, 6J8-G
6A8-GT
6K8-GT
検波・増幅 6Q7 6B6-G, 6Q7-G
6T7-G
6Q7-GT
出力 6F6
6V6
6F6-G, 6K6-G
6V6-G
6F6-GT, 6K6-GT
6V6-GT
整流管 5T4, 5Z4
6X5
5V4-G, 5Y3-G
5Z4-G, 6X5-G
5V4-GA, 5Y3-GT, 5Z4-GT
6X5-GT, 6AX5-GT
6S7-G, 6U7-Gにはシールド・ケースが必要です。

 真空管の規格表を見比べた結果、整流管の接続を下図のようにすると 5Z46X5-GT といったヒーター電圧の異なる整流管の 挿し替えができることがわかりましたので、採用しています。
 なお実際にはキットのトランスは半波整流で、しかも整流管用のヒーター巻線はありません。 やむなく6.3V-5V-2Aのヒーター・トランスを使用しています。



(ESSENTIAL CHARACTERISTICS,Copyright 1973 by General Erectric Company より転載)


5球スーパー定格表
型式5球スーパーヘテロダイン
受信周波数510kHz-1,651kHz(実測)
中間周波数455kHz
使用真空管6K8-G6K7-G6Q7-G6F6-G5V4-G6E5
感度5球スーパー程度
電気的出力2W(推定)
電源100VAC
消費電力-
スピーカー10cm ダイナミック
形状280x185x240mm
重量3.88kg
製作年月1990年9月


5球スーパーの回路

 整流管を変更すると、得られる電圧が異なってきます。以下は手持ちの球での測定例。
5V4-G/246V, 5AR4/247V, 5Z4-GT/241V, 5T4/240V, 6X5-GT/235V, 5Y3-GT/219V

(2008年3月6日周波数変換管について追記)
(2001年3月16日初稿)
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