並四ラジオ
(自作)


写真左-前方から 右-斜め上から


 書籍「真空管ラジオ・アンプ作りに挑戦!」(技術評論社、2004年7月刊) が出版されて以来、秋葉原の古い真空管用の部品の売れ行きが増えたそうです。 この本の109ページに内尾悟さんの記事で昭和初期の並四ラジオの回路が紹介されています。 直熱3極管 26B12A を交流点火で、しかも2段ともトランス結合と なかなか面白い回路なので、できるだけ忠実に作ってみることにしました。 (ラジオ工房「書籍追加情報」)

 最近は並四の部品の復刻が進み、コイル、シャシ、電源トランスといった部品は 手ごろな値段で揃いますが、真空管、バリコンの値段は高騰しています。 マグネチック・スピーカーの新品は到底入手不可能ですので、コーン紙を張り替えた物で 我慢することにしました。参考までに部品と値段を下の表に示します。

並四ラジオ部品表 (2004.12.14)
品名詳細個数単価購入店・備考
真空管 56検波用傍熱3極管1約2,000円 27ではヒーター電流が不足かも
 〃  26B増幅用直熱3極管1約3,000円 国産品種のため入手困難
外形の大きなアメリカ製 26
で代用可
 〃  12A増幅用直熱3極管1約6,000円 新品の入手は困難
 〃  12F直熱半波整流管1約4,000円 傍熱型の 12FK でも可
シールドケースST管用1(2,800円) 今回は使用しません
並四コイルミズホ通信11,575円 ラジオデパート3F シオヤ無線
親子バリコン17-335pF
(29-150pF)
11,000円 手持ちのバリコンの容量を実測し
適当な物を採用しました
タイトバリコン50pF 多摩電用1820円 シオヤ無線
電源トランス
(並四トランス)
200V-30mA
2.5V-1A
1.5V-CT-1A
5V-CT-0.5A
5V-0.5A
13,850円 ラジオセンター2F 内田ラジオ
チョーク10H 60mA11,050円 ラジオデパートB1F ノグチ・トランス
段間トランス1:32735円 ラジオセンター1F 東栄変成器
スピーカーマグネチック DCR 1.1kΩ13,000円 入手困難
RFC2.5mH1130円 ラジオデパート1F 瀬田無線
抵抗2MΩ 1/8W121円 マルツ電波
 〃100KΩ 2W131円 マルツ電波
 〃2.7kΩ 2W131円 マルツ電波
 〃1.5kΩ 2W131円 マルツ電波
 〃470Ω 5W131円 マルツ電波
コンデンサチタン・コンデンサ 270pF 50V150円 シオヤ無線
ブロック型
電解コンデンサ
22uF 350V
10μF 350V
2.2μF 350V
1315円 科学教材社
電解コンデンサタテ型22μF 50V250円 シオヤ無線
アルミシャシミズホ通信 並四シャシ12,800円 内田ラジオ
真空管ソケットタイト製4ピン(UX)3330円 シオヤ無線
 〃タイト製5ピン(UY)1330円 シオヤ無線
スイッチ回転式1500円 国際ラジオ 軸を短く切断
フューズ・
ホルダー
標準型ねじ込み式194円 マルツ電波
フューズ1A 125V127円 マルツ電波
アンテナ端子陸軍端子 小 赤250円 シオヤ無線
 〃陸軍端子 小 黒150円 シオヤ無線
つまみ6mm径軸用3150円 シオヤ無線
ACプラグ付コード1.8m 黒1130円 シオヤ無線
ケーブルブッシュゴム製150円 シオヤ無線
L型ラグ板1L6P170円 シオヤ無線
ビニル線0.3VSF 6色各4m1735円 ラジオデパート2F 鈴喜デンキ
スズメッキ線0.61300円 鈴喜デンキ
エンパイヤ
チューブ
赤黄黒 各1m1270円 シオヤ無線
卵型ラグ1袋1100円 西川電子部品
ビス、ナット、
平ワッシャ、
スプリングワッシャ
各1袋1420円 西川電子部品
プーリ、
シャフト、
ダイヤル糸
各1個11,000円 入手困難
合計金額--約37,000円 -


 並四シャシのおかげで、あっという間にこの状態まで進みます。 ドリルを使ったのは、バリコンの穴3箇所、トランスの取り付け穴6箇所だけです。 部品によっては、リーマーで多少穴の大きさを拡げてやる必要がありました。

 これで配線は終了。 電圧調整のため、B電圧の回路の抵抗は取り替えやすいような配置にしておきます。
 1:3のトランスは東栄変成器のものより小型の手持ちの物を使いました。

 アンテナ・コイルの配線は、シャシに取り付ける前にあらかじめリード線を 取り付けておくと失敗しません。 ロータリー・スイッチのように込み入った配線をする部品には、よく使われる方法です。

 箱がほしい!

並四定格表
型式並四ラジオ
受信周波数508kHz-1,764kHz
使用真空管56、26B、12A、12F
感度3ペン(6C6、6Z-P1、12F)程度
電気的出力250mW(推定)
電源100VAC
消費電力-
スピーカー20cm マグネチック
形状220x200x160H mm
重量本体2.02kg、スピーカー0.35kg
製作年月2004年12月


並四ラジオ 回路図

調整
 26B、12A のプレート電圧は規格で180Vまでに制限されていますので、 470Ωの抵抗を入れて調整しました。 回路図ではわずか6Vの電圧降下のために抵抗が入っているように見えますが、 これがないとB電圧が22Vも上がってしまいます。 この辺は単純計算ではわからない奥の深いところです。

 56 のような3極管のグリッド検波では、プレート電圧20Vくらいのとき 感度がいちばん高いとする資料もあり、RCAのマニュアルでも45V以下で使えとありますので 38Vに設定してみましたが、それほどシビアなものではありません。 ちなみにこの状態で 27 に差し替えると25Vになります。
 整流管を 12F12FK80BK と差し替えてみましたが、 意外にもB電圧の差は5V未満でした。

試聴
 スイッチを入れた瞬間からブーンというハムが聞こえてきて、 しばらくすると放送が聞こえてきます。 盛大にハムが聞こえるのでACプラグの向きを逆に差し換えたら、 不思議とハムが収まって放送がクリアになりました。 マグネチック・スピーカーからは古(いにしえ)の音が聞こえます。 すっかり直熱管のファンになってしまいました。

 当地は超強電界なため、アンテナなしでもガンガン放送が入る代わりに混信だらけです。 それでも50cmくらいのビニル線アンテナを付けて再生バリコンを調節すると、 なんとか混信から逃れることができました。
 せっかくの真空管を隠すのも無粋ですので、検波管にシールド・ケースは付けていません。 そのため手を近づけるだけで感度が変化するボディ・エフェクトがありますが、 実用上は問題ありません。


 真空管を 56、26B、12A、12F から、56 ナス管、226112A301A(カニンガム版 201A:プレートとグリッドを結んで2極管として整流) に置き換えてみました。 301A の整流ではB電圧が40Vも下がってしまいますが、 感度はほとんど変わりません。112A の整流でも似たようなものです。
(2005年8月3日ナス管の写真を追加)
(2004年12月14日初稿)
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