先人たちの知恵
市販ラジオ・キット

はじめに
 第二次世界大戦後の1949年ころまでは、メーカー製ラジオには30%もの物品税がかかっていたこともあり、 メーカー製のものを買うよりも作ったほうが安いという時代でした。 また、先端技術のラジオへの興味は5球スーパーなどの 製作へと若者を駆り立てたのです。 個々に部品を買うよりも安くて便利なキットと、 その裸シャシを収める木箱も市販されていました。 ラジオ製作は中学校の授業にも取り入れられました。 やがて真空管ラジオのキットはトランジスタ・ラジオのキットに 取って代わりました。

 半導体とプリント基板の発展が 大量生産を可能にし、メーカー製品の価格は大幅に下がりました。 いつの間にかラジオに限らずいろいろなものが、 自分で作るより買ったほうが安くなり、 作るのはばかばかしい、という風潮にもなってきました。 かつて存在したラジオに夢中な少年はすっかり姿を消し、 わずかにロボットやパソコンに熱中する少年が残っています。 多くはゲームやアニメオタクになってしまったのでしょうか。 そんな中で多くのラジオ・キットは役割を終了しました。 現在も生産を続けているメーカーには、 心からエールを送りたいと思います。


スパイダー式ゲルマラジオ(科学教材社)
 私が小学生のころ、雑誌「子供の科学」に掲載されていた広告 そのままの製品を、現在も変わらずに販売している企業姿勢は尊敬に値します。
 スパイダーコイルを自分で巻くのは楽しいことだということを知りました。 単純なものほど奥が深いのです。

2石レフレックス・ラジオ TR-202K(ORIENTAL)
 高周波増幅と低周波増幅をひとつのトランジスタで行うのがレフレックスです。 もうひとつのトランジスタで電力増幅をしてスピーカーを鳴らします。 電波の強いところでしか実用にはなりませんが、わずかふたつのトランジスタで スピーカーを鳴らすことができるのはすばらしい。

2SA1002SB186、ダイオード1本
マグネチック・イヤホン付

メーカーについての詳細は不明。

2石レフレックス・ラジオ AR-205(Ace)
 こちらは、エースの2石レフレックスです。

2SC1815GR x2本、ダイオード1本
マグネチック・イヤホン付
出力30mW

2石レフレックス・ラジオ 2SP-211(Homer)
 こちらは、ホーマー(有限会社共和製作所)の2石レフレックスです。

 ほぼ同じ構成で、スピーカーのないイヤホン式2T-100を組み立てたことがあります。 2T-100は音量調整がないのが不便でしたが高感度だったので、 コイルを取り替えて短波用に改造してみたところ、 なんとか実用になりました。

2SC461C2SC458D、ダイオード2本
マグネチック・イヤホン付
出力30mW

3石ラジオ 3ST-21(日乃出電工株式会社)
 高周波増幅、低周波増幅、電力増幅をひとつずつのトランジスタで 行っています。

2SC8292SC945 x2、ダイオード1本
マグネチック・イヤホン付
96dB

 ラジコンなどではその名の知れたメーカーで、 小型ラジオの生産も手がけていたようですが 現在の消息は不明。

3石レフレックス・ラジオ AM-32(理研産業株式会社)
 2石レフレックス・ラジオに周波数変換を付けた、と理解した方が わかりやすい構成です。 大変珍しいラジオだと思います。

2SA2012SA1012SB187、ダイオード1本
マグネチック・イヤホン付
出力50mW

 メーカーは補聴器の「リケン」として、ご存知の方も多いはず。 数年前にキット教材から撤退しています。

3石レフレックス・ラジオ回路図
 回路図掲載の許可を得ています。でも、よく見えませんね。

4石レフレックス・ラジオ AR-400(Ace)
 2石レフレックスにプッシュ・プルの出力段を付け加えたような構成のラジオです。

2SC1815GR x4本、ダイオード2本
マグネチック・イヤホン付
出力100mW

6石スーパー PEGASUS(ニューウッド)
 大型の中学校教材用キットで、大型のスピーカー、トーンコントロールを 備えています。単2電池3本を使用します。 分厚い解説書は大変親切で、勉強になります。

2SC380 x1、2SC1815-Y x2、2SC1959-O x1、2SC2120-O x2、ダイオード1本
マグネチック・イヤホン付
出力450mW

6石スーパー CK-606(CHERRY)
 ケースなどのコストダウンが目に付きますが、性能は十分なラジオです。 数年前に、秋葉原で購入しました。

2SC1815(O) x3、2SC1815(GR) x3、ダイオード2本
マグネチック・イヤホン付
出力260mW

 このメーカーもすでに生産を終了したようですが、詳細はわかりません。 生産時期によっては発振気味になるような問題があるようですが、web 検索すると対応策もあるようです。

6石スーパー AR-606(Ace)
 6石スーパーはラジオ・キットのスタンダードです。 私も、1974年に技術の授業で作りました。 作ったラジオが鳴った生徒は、クラスの6割くらいだったでしょうか。 私はイヤホンジャックを入力にして、ギターアンプにも 使えるように改造した覚えがあります。

2SC1815(Y) x6、ダイオード2本、出力200mW
マグネチック・イヤホン付
 AceにはBCLラジオみたいなデザインの6石スーパー AR-600 もありました。 今は廃業したと聞いています。

8石スーパー/ゲルマニウム・トランジスタ AR-808(Ace)
 トランジスタ・ラジオは当初トランジスタの単価が高かったため、 登場したときから自励コンバータでしたが、 このラジオでは他励式としています。出力段はB級プッシュ・プルで、 出力を高めながら電池の消耗を抑えるためには当然の選択でしょう。

2SA102(BA) x2、2SA101(X) x2、2SB175(B) x2、2SB172(A) x2、 ダイオード1本、出力250mW
サーミスタが使用されています。
マグネチック・イヤホン付
 Aceにはこの8石スーパーのほかにBCLラジオのようなデザインの 8石スーパー(AR-800)もあり、私も作りました。 基本は6石スーパーで、同調すると発光ダイオードが点灯する仕組みに 2石使っていました。

8石スーパー/シリコン・トランジスタ AR-808(Ace)
 上記のラジオを時代に合わせてシリコン・トランジスタに 変更したものです。サーミスタもダイオードに換えられました。 デザインが違うように見えますが、箱に隠れているだけです。

2SC1815(Y) x8、ダイオード2本、出力250mW
マグネチック・イヤホン付
 他励式であることから、これを改造して短波受信機を作るつもりで買いました。 構想を練っているうちに、その構想に近い次のキットが登場しました。

SR−7(アイテック電子研究所)
 1994年「ビギナーのためのトランシーバー製作入門 AM SSB編」(CQ出版社) で、紹介&宣伝していた7MHzアマチュアバンド専用受信機のキットです。
 大変よくできていますが、ヘッドホン を使用できるように改造する必要があるでしょう。

 久しぶりにふたを開けたら、製作年月日が書いてあるシールを見つけました。 もう10年以上昔の工作でした。

周波数カウンター(秋月電子通商)
FC-355DXU 100Hz-54MHz IFのプリセット6通り
 短波受信機の周波数を直読しようと、1980年代に作ったような覚えがあります。 乾電池で使用できるように作ったのですが、 消費電流の多さに耐えかねてAC式に改めました。

短波コンバータ(科学教材社)
 発振と混合に EFT(2SK19-Y)を2石使用したシンプルなコンバータで、 7MHz 帯の電波を BC バンドに変換します。 ON/OFFのスイッチすら付いていませんが、感度は悪くありません。

 1990年代に東急ハンズ渋谷店(現ハンズ)で購入。 メーカーや連絡先などは一切示されていないというキットでした。 二十余年ぶりに物置から発掘。 web の記事を調べるうちに、ようやく正体がわかりました。

 雑誌「模型とラジオ」(科学教材社)1979年8月号の記事「AMラジオでハムを聞こう 『短波コンバータの作り方』」(丹羽一夫さんの連載記事)を元に販売された科学教材社のキットだったようです。 別途 BFO が必要です。 1980年1月号に関連記事があります。

50MHzコンバータ(科学教材社、エレキット改造)
50MHz 帯の電波を 短波バンドに変換します。

 上記の短波コンバータよりも古いかもしれません。 テレビの音声を FMラジオで聴くことができるエレキットのコンバータを改造して、 科学教材社のゲルマラジオに移植したという異色のコンバータ。 SONY の3バンドラジオと組み合わせて聞いてみたのですが、当時の 50MHz帯は静かなものでした。 そこでスタンダードの AX700を購入して聞いてみたのですが状況は変わらず。

50MHzワイアレスマイク(エレキット改造)
50MHz FMワイアレスマイクです。

 調子に乗って送信にも挑戦。 FMラジオと組み合わせて使うワイアレスマイクを50MHz用に改造しましたが、 発振周波数がフラフラでまったく実用になりませんでした。 電源は単3電池2本。

 余談ですが20世紀の法律改正前のワイアレスマイクは、1.5V電源でも 50m くらいは電波が届きました。

おしゃべり時計”時間ですよ”(エレキット)
時刻を音声で知らせる時計です。 ちょっとアクセントが標準語と違うところがかわいい。

 20年以上に亘って実用に供している優れもので、単3電池2本で半年ほど動作します。 残念ながら生産は終了したようです。
(2012年5月2日短波コンバータ、おしゃべり時計他追加)
(2004年3月6日初稿)
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