先人たちの知恵
ペンタフレックス
回路図1 6A7 を使ったペンタフレックス
6A7 ---> Pentagrid Converter ---> Pentagrid + reflex ---> Pentaflex
アメリカのアマチュア無線家向けの本 "1934 Official SHORT WAVE Radio Manual" を見ると、
1球から3球程度の簡単な構成の短波受信機が次々と登場し、70年ほど過ぎた現在でも
わくわくする内容です。当時のアマチュアたちがこの本を読んで
どれほど夢を膨らませたか、想像に難くありません。
その中でも、J.A.Worcester,Jr による、
6A7 を使ったこの ペンタフレックス は出色のできです。
発表されたばかりの周波数変換管 6A7 単球で、0-V-1 を構成しています。
(回路図1参照)
もともと 6A7 は、局部発振用の3極管と周波数混合用の4極管を
1つにまとめてしまったような構造で、
2本必要だった真空管を1本で済ますことができる画期的な開発でした。
これを逆転の発想で使用しています。
カソード、第4グリッド、第5グリッド、プレートから成る仮想4極管で、
グリッド再生検波をさせています。
カソード・バイアスの影響を受けないように、アンテナコイルの一端は
カソードに接続してあります。
カソード、第1グリッド、第2グリッドから成る仮想3極管で、
低周波増幅をし、両耳式レシーバーを鳴らします。
6W-C5、6SA7、6SA7-GT、7Q7、6BE6 は、
第2グリッドと第4グリッドが管内で接続されているため、この回路には使用できません。
なお、6A7 の同等管には、
6A8、6A8-G、6A8-GT、7B8 があります。
回路図2 1AB6 を使った回路
1955年ころ、松下の電池管 "Dシリーズ" の発表とともに、周波数変換管 1AB6/DK96 を
利用した回路(回路図2参照)が雑誌「無線と実験」(現MJ)に発表されました。
1AJ4/DF96 の単球再生検波より感度が良いので、学校教材に好適である、
とあります。
こちらは 6A7 の回路とは異なり、フィラメント、
第1グリッド、第2グリッドから成る仮想3極管で、グリッド再生検波をさせています。
第2グリッドから取り出した信号は、AFTでステップ・アップした後、
フィラメント、第3グリッド、第4グリッド、第5グリッド、プレートから成る仮想5極管で
増幅されます。
なお、電池管のグリッド検波では、3極管、5極管、7極管のいずれを使用しても、
グリッド・リーク抵抗をグリッドとフィラメントのプラス側を結ぶように接続します。
マイナス側につなぐと感度が落ちてしまいます。
あるいはグリッド・リーク抵抗をグリッド・コンデンサと並列に接続して、
A電池をプラス接地にしても同じことです。
1AC6/DK92 は 1AB6/DK96 の原型の50mA管で、同様に使用できますが、
1R5/DK91 は、2グリッドと第4グリッドが管内で接続されているため、この回路には使用できません。
余談ですが、この回路ではA電池とB電池のアース側を結んで一つのスイッチで済ましています。
一見問題なさそうですが、スイッチを切っているときでも、電解コンデンサのリークを通じて
B電池 → 電解コンデンサ → フィラメント → A電池 → B電池
というループで微小電流が常に流れ、乾電池を無駄に放電させてしまいます。
(2002年11月21日初稿)
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