TRIOのコイル
T-6 (TRIO Technical Data Sheet No.30 1954年より転載)
μ同調・高選択度IFT
規格表
中心周波数 455kHz
インピーダンス A:50kΩ、B:50kΩ
(初期型 A:98kΩ、B:50kΩ)
選択度 31.5dB(±10kHz)
帯域幅 6.2kHz(-3dB)
同調容量 300pF(A)、150pF(B)
(初期型 150pF AB共)
耐湿度 中心のずれ 1kHz以内
選択度低下 2dB以内
コイルとコイルの間隔 17mm(A、B共)
すでに中波の放送局数は飽和点に達し、民間放送が短波にまではみ出しました。
放送局の所在する都市の近在では分離は大して問題になりませんが、
弱電界微電界の地方では良い選択度の中間周波トランスを使用しなければ、
好みの放送を明快に分離することは不可能になって参りました。
トリオ T-6 高選択度 IFT は、従来のものをさらに改良して、
1段増幅で可能な限界点まで選択度を上げ、しかも音質を害さない、
必要な帯域幅を持たせた、高級中間周波トランスであります。
高選択度のラジオは勿論、
アマチュア用通信型受信機等に使用して優れた性能を発揮いたします。
T-6 型 IFT は、6D6、6SK7、6BD6 など gm が2ミリ・モー以下の
真空管に適合するように設計されております。
利得はご使用真空管の gm にインピーダンスを掛ければ、ただちに算出できます。
たとえば 6SK7 を使用する場合は2(ミリ・モー)×50(kΩ)=100=40dB 即ち段間で
40dB の利得が得られます。
【利得の表示にインピーダンスを用いることが日本工業標準化法(JIS)で決定されています。
トリオIFTはJIS規格に準拠して設計されておりますので表示方法はすべてこれに準じております。】
高感度を得ようとして2ミリ・モー以上のハイ gm 管を使用しますと発振することがありますから、
なるべく適合真空管を御使用ください。
*HP作者コメント
T-6 型はトリオの黎明期(れいめいき)に開発された IFT で、最初期型のベースは薄いベークライト製でした。
写真の T-6 型はその後登場したモールド成形ベースのものです。
このタイプには仕様の異なる初期型、後期型の2種類が存在しますが、
IFT の外観や箱で見分けることは不可能。
前期型・後期型どちらのデータシートも同じ日付です。
1953年ころの値段は 430円、1960年ころの値段は 450円、1968年ころの値段は 500円。
1971年発行の「JARL アマチュア無線ハンドブック」第3版 p.71、72から引用します。
「(IFT の)インピーダンス:真空管用とトランジスタ用とでは意味が違います.
真空管でいうインピーダンス Z とは, 相互コンダクタンスが gm である IF増幅管と IFT とを
組み合わせたときの IF段の増幅度が A であるとき
Z=A/gm
の式で計算された値であって, IF増幅管のプレートから見た負荷インピーダンスでありません.
IFTの二つの同調回路の結合を疎から密にすると, 臨界結合に近づくほど IF段の A は大きくなり,
したがって IFT のインピーダンスも大きくなりますが, IF増幅管のプレートから見た
負荷インピーダンスは逆に小さくなります.
(HP作者注釈: 日本工業標準化法(JIS-C6422)によれば、増幅度A は gm が 1.6ミリ・モーの真空管
(6D6)のプレートに IFT を接続して測定した増幅度です。
5球スーパーのコンバータ管側の IFT も検波管側の IFT も同様の方法で測定します。
ただし検波管側は2極管検波を想定して2次側に250kΩの抵抗を負荷としています。
そのため例え2つの IFT がまったく同一のものであったとしても、
インピーダンスの値は異なることになります。
当時 TRIO は IFT のインピーダンス表示を採用していましたが、
STAR は dB(当時は db)表示でした。)
トランジスタ用 IFT ではインピーダンスはたいてい R1:R2 という1組の値で示されます.
IFT の一次コイルの Coll(コレクタ)Batt(電池)間に R1 を,二次コイルの Base(ベース)
Bias(バイアス)間に R2 をつないだときの選択度(あるいは負荷Q)が所定の値であり,
また動作減衰量が最も小さくなる抵抗値です.」
とあります。
市販のトランジスタ用 IFT の一例を示せば、初段用 IFT-A(黄)70kΩ:800Ω、
段間用 IFT-B(白)30kΩ:500Ω、検波段 IFT-C(黒)15kΩ:5kΩ。
1次側は 455kHz に同調、二次側は非同調です。
(2001年8月7日初稿)
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