TRIOのコイル

T-12 (取扱説明書より転載)

2段増幅可変帯域スイッチ切換式
μ同調 IFT
規格表
中心周波数  455kHz
選択度    狭帯域 -47dB(±10kHz)
帯域幅    狭帯域 3kHz (-3dB) 広帯域 12kHz (-3dB)
インピーダンス 1=40kΩ
          2=40kΩ
          3=30kΩ
同調容量    300pF
大きさ      高さ 78mm、36mm 角

 トリオ T-12 型 IFT は、狭帯域(高分離性)と広帯域(良い音質を得るための高忠実度) の2段に切換えて使用できる高級受信機用IFT であります。
 広帯域における帯域幅は 12kHz(-3dB の点の幅)、 狭帯域における選択度は -47dB(10kHz 離調の点の減衰度)で、 1個の IFT で音楽鑑賞用と高選択度用を兼備したものであります。

 スイッチを使用せず、希望帯域に接続して使用することもできます。 IFT は機械的安定性を得るために完全なダストコアー支持装置を用い、 電気的安定性のために High C 型とし、耐湿耐久的μ同調方式を採用してあります。

*HP作者コメント
 Hi-Fi 受信のためにアンテナ回路の Q ダンプなどで利得が低下しても、 十分な利得が得られる 2段増幅としています。 高音質が売りものの高忠実度2段用広帯域 IFT として登場した T-9 を、 広帯域、狭帯域2段可変帯域にした IFT が T-12 で、混信時にも対応でき調整も易しくなりました。

 1950年代初頭のトリオのカタログに掲載され、 5バンド・コイルパック KR-5 に組み合わせる IFT の一つとして推奨されていました。 初期の製品はベークライト・ベースを使用していますが、 途中からモールド成形ベースへと変更されています。 1953年ころの値段は 710円。

 後期のモデル(写真のもの)では AVCによる同調周波数のズレを小さくするために、 1番目、2番目 IFT の2次側コイルにタップダウンが採用されました。

 その後改良型の2段増幅3段可変帯域 TRIO T-48 (左の写真)に Hi-Fi IFT の座を譲って、 T-12 は 1960年ころのカタログには掲載されていません。 T-48 にはタップ・ダウンが採用され、検波段 IFT の 2次側は非同調になりました。

 2段増幅 Hi-Fi IFT は、他のメーカーからも発売されていました。 以下に紹介します。

STAR 高忠実度 2段増幅用 IFT 5型 (A5・D5・B5) C同調型

定格周波数           455kHz
コイルのQ            125
実効Q                95
増幅度           A5-30dB  D5-30dB  B5-27dB
選択度 (±10kHz)   A1-12dB  D5-12dB  B1-6dB
帯域幅  ±10kHz

可変帯域 2段増幅用IFT 31型 (A31・D31・B31)

広帯域           高忠実度受信用
狭帯域           高選択度受信用
定格周波数           455kHz
コイルのQ            125
実効Q               97
総合増幅度      広帯域 82.6dB 狭帯域 91.8dB
総合選択度(±10kHz)広帯域 10dB 狭帯域 47.5dB
帯域幅         広帯域 16kHz  狭帯域 1kHz

帯域幅を無段階に可変できます。

ゼンセン μ同調 IFT (タイト・ベース)
音質本位・二段増幅用 C3・C4・C5

帯域幅±6kHz 選択度±10kHzで30dB


LUX TYPE 170-2 (錦水電気工業)

特性を自在に設定できる高級品ですが、使用中の変更はできません。 6SA7-6SK7-6SK7-6SQ7 の場合
同調周波数 455kHz、利得は X:34dB、Y:43dB、Z:39dB(特性曲線 A の場合)


FIVE H (5H=ファイブ エッチ) μ同調 IFT 1203

日本電響株式会社の製品で、中間周波数 463kHz の時代に μ同調 IFT 203 として  NHK の認定を得て発売されていた歴史ある IFT の後継モデルです。 455kHz 変更に伴い製品名が変更されました。 調整ネジにはロック・ナットが付いている本格派。

左の写真の左端の IFT と真ん中の IFT は全く同じもので、デザインの違いは表と裏。

LO-B と印字された IFT は、 同調インピーダンスを低く密結合として双峰特性持たせた IFT で電圧増幅度は 34dB。 IFT の頭頂部から伸びているリード線は、コイルのタップに接続されています。

LO-C と印字された IFT は、臨界結合として同調インピーダンスを大きくとった検波段用。

当初名乗っていた THREE H (3H=スリー エッチ)のブランドを、 1949年ころ FIVE H に改めています。

箱の中には THREE H 時代のままの説明書と、青焼きの資料が同梱されていました。
1953年ころの値段は 650円。

他にもBCバンド用、2バンド用、3バンド用スーパー・コイル、標準型 1段用 IFT、 小型 1段用 IFT などを発売していました。

RISING TYPE 20 μ同調 IFT

検波段 IFT の 2次側はタップ・ダウンされています。

RISING (北陽無線工業株式会社)は 5球スーパー・コイル S-50 型、 ST 管用 IFT No.20No.37 (C同調)、mT 管用 IFT M-20M-27、 4球スーパー用再生付 IFT K-40 などを発売していました。
(2014年10月1日初稿)
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