整流管 12FK 80K
===ラジオ用半波整流管=== 写真左から順に
12F(マツダ) 半波直熱整流管 フィラメントEf=5V、If=0.5A、
交流入力Ep=300V、整流出力Io=40mA。
80BK(松下) 半波傍熱整流管 Ef=5V、If=0.7A、
Ep=350V、Io=70mA、1949年発売。
80HK(テン) 半波傍熱整流管 Ef=5V、If=0.6A、
Ep=350V、Io=65mA。
12FK(松下) 半波傍熱整流管 12Fと
同特性で挿し替え可能。
5G-K3(松下) 80BKをGT管にしたもの。
5M-K9(マツダ) 半波傍熱整流管 Ef=5V、If=0.6A、
Ep=350V、Io=60mA。
12F は 12B の改良型の半波直熱整流管で、戦前には 12A、47B と
いった直熱出力管の並四ラジオに使われ、戦後の廉価版の5球スーパーにも使われました。
終戦直後の劣悪電解コンデンサーのパンク事故対策と 42 を出力管とする
5球スーパーに対応すべく、12F を傍熱形にし出力電流も拡大した 12K、
80BK が開発されました。
「ラジオ技術」1949年11月号の記事によれば、マツダの 12K は
Ef=5V、If=0.6A、Ep=350V、整流出力電流Io=60mAでした。
驚くべきことに JRC の 12F はIo=60mA、12K は Io=80mAという
記述があるのですが本当でしょうか。
その後マツダの 12K は改良されて 80HK となり、
マツダ/東芝とテンが製造しました。
12F と同特性で挿し替え可能な傍熱整流管 12FK も発売されました。
わが国で 6WC5 - 6D6 - 6ZDH3A - 42 - 80BK
(または 80HK)といった ST管5球スーパーが数多く作られていたころ、アメリカでは
6BE6 - 6BA6 - 6AV6(当初は6AT6) - 6AQ5 - 6X4
といった mT管5球スーパーが発売されていました。
わが国も 1950年代にようやく mT管の生産が軌道に乗り、5球スーパーも mT 管の時代になりました。
わが国では、6D6 用IFT、42 用 7kΩ出力トランス、80BK 用
半波整流の電源トランスを流用するために
6BE6 - 6BD6 - 6AV6 - 6AR5 - 5MK9
の5球を選択したメーカーが多かったようです。
(6AQ5 は 5kΩ、6AR5 は 7kΩ)
80BK の GT管版の 5G-K3 も登場しましたが、出番はありませんでした。
===ラジオ用全波整流管=== 写真左から順に
80(双葉) 全波直熱整流管 f=5V、If=2.0A、
Ep=350V、Io=125mA。
ナス管 280 を ST管にしたもの。
80K(松下) 全波傍熱整流管 Ef=5V、If=2.0A、
Ep=400V、Io=140mA。80 と挿し替え可能。
5Y3-GT(東芝) 80 を GT 管にしたもの。
5CG4(松下) 全波傍熱整流管 Ef=5V、If=2.0A、
Ep=350V、Io=125mA。5Y3-GT と挿し替え可能。
83V(GE) 全波直熱整流管 f=5V、If=2.0A、Ep=370V、Io=175mA。
80K とピン接続は同じですが整流電圧が高く出るため、挿し替えると
トラブルが起きる可能性があります。
わが国では生産されませんでした。5V4-G 同等。
80 はラジオ黎明期(れいめいき)から5球スーパーや電蓄に広く使われた
全波直熱整流管です。
42 などの傍熱出力管と組み合わせて使うと、電源投入後数秒間は出力管に
電流が流れないため、整流電圧が一時的にかなり高くなります。
これが原因で電解コンデンサがパンクすることがあります。
電解コンデンサの耐圧に十分な余裕を持たせて防ぐこともできますが、
コストが大幅に増えてしまいます。
そこで電解コンデンサのパンク対策として、80 を傍熱形にしたのが
戦前の 80K(Ef=5V、If=2.0A、Ep=350V、Io=125mA)。
「電源電圧の低下によるエミッションの不良によって起こるプレート-カソード間の
スパークなどいろいろ難点があり、一般に普及しなかった」。
(「ラジオ技術」1949年11月号より)そのため、一旦は市場から消えてなくなりました。
戦後松下から発売された 80K は、それらの問題点が解消されており
特性も変更されています。
松下の真空管元箱には小さなデータシートが同封されていることがあります。
80K のデータには If=1.75A と記載されたものと、If=2.0A と記載されたものの
2種類があります。
そこで手持ちの 80K に直流 5V を加えて、If を測定してみました。
プレートの形状が2種類ありますが、結果は未使用品3本、中古品2本全てがIf=2.0Aでした。
If=1.75A は誤植ではないでしょうか。
5CG4(別名 5G-K4) は 80K を GT管にしたもので、
5Y3-GT と挿し替え可能です。
そう言えば、TRIO 9R-59 の回路図には 5Y3(5CG4)
と記載されていました。
(2008年1月29日初稿)
Reset