科学教材社のコイルパック



*HP作者コメント
 冒頭の画像は「無線と実験 1955年3月号」p.119 の広告、 そして左の3枚がその実物の画像です。

 NSB(Nihon Short-wave Broadcasting co, ltd:株式会社日経ラジオ社 愛称は「ラジオたんぱ」) が 1954年8月27日に 3.925MHz と 6.055MHz の2波で開局しました。

 既存の5球スーパーラジオで NSB を簡単で安価に受信する方法として、 NSB チューナーを使う方法が奨励されました。 しかし NSB チューナーは局部発振に第2高調波を利用することやトラッキング調整を省略してあることから、 手軽ではありますが感度はもうひとつだったようです。
 トリオやスターから発売されていたコイルパックを用いれば満足のいく性能は得られますが、 既存の5球スーパーのシャシ内部には従来のコイルパックを納めるだけの余裕はないでしょう。

 そこに登場したのが、ここで紹介した科学教材社の「超小型2バンド・コイルパック」です。 この広告では NSB の周波数に合わせ、短波の周波数帯は 3MHz〜9MHz となっています。

 ところが、ここで重大な問題が起こります。 1955年6月15日には NSB の放送波に 9.595MHz が追加され3波放送となります。 放送プログラムは3波とも同一で、季節や時間と共に変化する電波伝搬の状況により 聞き易い周波数を選択して受信するためです。 このままでは 9.595MHz の放送は聞くことが出来ないのですが、果たして科学教材社の対応や如何に?
 左の写真のコイルパックのインダクタンスを測定した限りでは、 3.5MHz〜10MHz に対応した仕様に変更されているようです。 コイルパックの裏側に "B" と印字があり、 おそらく CLD 協会規格で定めるBバンドであることを示しているものと推測します。
 資料の類は手許にありませんが、左の図のような回路で動作させるものと思います。

 短波バンドの調整は、インダクタンス固定ですから一点調整となります。 バリコンの羽根が 90%ほど抜けたダイヤル位置で 短波帯 9.595MHz の放送波が受信できるように発振コイルのトリマを調整し、 その位置で最高感度になる様にアンテナコイルのトリマを調整します。

 中波受信時のアンテナコイルは2つのコイルが直列になり、 そのときのインダクタンスは実測 201.9μHとなります。

左の写真
上段左 スター PR-2(1955年以前)
上段右 スター PR-2L(1955年3月)

下段左 科学教材社 超小型2バンド・コイルパック
(1955年3月号に広告掲載)
下段中 トリオ KC-2B(1957年2月)
下段右 スター PR-2LM(1958年4月)

 上段の2つは従来の標準サイズで、コイルパックの高さが PR-2 は 55mm、より新しい PR-2L は 45mm。

 下段の3つは何れも「超小型」を標榜しています。



 科学教材社には、BFO コイルもありました。
(2016年12月4日初稿)
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