湯本さんの作品
15バンド受信機
(自作)



コリンズの30バンド受信機に憧れ 5年がかりで コリンズタイプの15バンド受信機を完成しました。
0.5MHzから10MHzまでは トリプルスーパー 10MHから30MHzまでは ダブルスーパーとしました。 1バンド2MHz幅若干のオーバーラップとしました。 ここで問題になるのが ギヤートレインです。 局発の直線性はバリコンですので 望めない上 各コンバーターRF増幅も バリコンですので これまた非直線的ですので 完全なトラッキングは 望めません。

いろいろ考えた末 受信周波数表示のカウンターから 局発周波数の分周したものを取り出し それを基に トラッキングデーター を EPROM から取り出し それでサーボモーターを駆動して各コンバーターの バリコンを回転して ギヤートレインの代わりにするものです。 これが 思いの外うまくいきました。

(写真はシャーシ上部)

計画
コリンズの30バンド受信機については 何も判っていないので資料を探し構成について検討する。
無線機の本 VINTAGE RADIO COLLECTION を 買ってきて読み始めると 軍用無線機の あきれ返るほどの 贅沢さと豪華さと精密さと頑丈さと武器としての威圧的なデザインに 少々息苦しくなるようでした。
その中で 豪華さと精密さは 非常に魅力的です。
自分の出来る範囲で 換骨奪胎して 製作可能ではないかと思い 着手しました。

1. 30バンド切替のロータリーSWが見つからないので 15バンドにする。 コイルの切替はリレーとする。

2. 第3コンバーターを可変とする。バンド幅は2MHzになるが Aバンド中波帯0.5〜1.7Mz までは表示は0〜2.2MHzとなり Bバンドは1.58MHz〜4.2MHzとする。Cバンドは3.58MHz〜6.2 MHz とする。以下30MHzまで 全部で15バンドとする。Aバンドは1.7〜2MHzが受信できな いので(第1コンバーターの構成により) Bバンドに負担させる。

3. 手持ちのバリコンとBバンドのバンド幅の関係で 第3コンバーターの入力 4.92MHz〜2.28 MHzにする。 (受信周波数の低い方で4.9MHz 高い方で2MHzに成るように設計したので 後々製作と調整 中に 混乱しました。何をやっているか分からなくなり 頭を悩ます)

4. Fバンド〜Oバンドは ダブルコンバージョンとして 第2コンバーターに直接入力する。 上側局発でクリスタル局発14.5MHz〜32.5MHzとする。22.5MHz〜32.5MHz 2倍オーバートーン 第2コンバーターは10バンド分をコイル1組で9.6MHz〜30.2MHzを受信する。

5. Aバンド〜Eバンドは トリプルコンバージョンとして 入力は第1コンバーターに出力は 第2コンバーターに入力する。 上側局発でクリスタル局発12MHzとする。 第1コンバーターは Aバンド0.52MHz〜1.7MHzまでをコイル1組で Bバンド1.6MHz〜4.2MHz までをコイル1組で C, D, Eバンド3.6MHz〜10.2MHzまでをコイル1組でカバーする。

6. 1バンドの幅を広く取ると スプリアスが現れやすくなることは 明らかですが いままで このような物を作ったことが無いので まあやってみることにします。

7. 製作途中で 問題がおきたならば そのつど計画変更で対処する。

受信機の構成.pdf(110kB)

受信機の回路図.pdf(211kB)

部品の配置.pdf(207kB)

製作

第3コンバターの製作

[1] 第2IF同調-6BA6-第2IF同調-6BE6-第3IFT 2次50Ω 局発6BA6  AM 3連 FM 4連用バリコンを使用。

コイルは以前手に入れた FMチューナー用のコア入りボビンを解いたものを使用。 第3IF 455kHz増幅には コンバータテスト用に製作した IF電圧計を使用。

コンバータ構造図.pdf(41.5kB)
始めから大張りきりで5mm厚の硬質アルミ板をカットして枠を造り 1mmのアルミ板で 蓋をしてシールドケースを作る 真空管は発熱するので ケースの外に置く。 ここまでは 案外簡単に出来上がりです。

ところが 周波数安定度が非常に悪い 温度依存性が大きい どうもコイルらしい。 20分程で最低になり そこから上昇を始め1時間ほどたつとほぼ安定するが 2時間たって もじわじわ上昇する コイルの固定に使ったパラフィン(バーアンテナのコイルなどの固定に 使用されている常温でもカチカチに成らないもの)が いたずらしているらしい。
コイルを巻きなおして再度調整したが なんだか様子がおかしい ものすごい周波数のドリ フト サンハヤトの高周波ニスが生乾きで 乾燥するまで2日間 しかしその後もじわじわと ドリフトする。頭を抱える。昔高周波ニスの代わりに発泡スチロールをシンナーに溶いた ものを使ったことを思い出し やってみると生乾きでも ほとんどドリフトせず そ調整程 度は出来そうです。しかし温度依存性は ある程度は改善されるものの大きいのです。

抵抗とトランジスターで恒温曹を考えテストする。 比較的短時間で安定するので これはいいと思ったら 0.5度程度の温度上昇下降で温度変化 どうりの周波数変化をする。結局コアが悪いらしい。コアは手に入らない。
積極的に温度を上昇させようと 真空管をシールドケースに内臓してみると 今度はいつま でたっても安定しない。ここでしばらく頭を冷やす為に第2コンバータを作る。

写真は第3コンバーター
(第1 第2コンバーターの内部写真は有りませんが 似た構造です。)

[2] 第2コンバーターの心臓部クリスタルの発注をする。約3週間で到着。 第3コンバーターと同じようなデザインで 真空管をケースの外に出し手前側にロータリーSW の軸を出し反対側に2連バリコンの軸を出す。このバリコンの同調範囲は9.6MHz〜30.2MHzま でコイル1組でよいので 比較的簡単です。

第1IF同調-6BA6-第1IF同調-6BE6-第2IF(高周波トランス) 局発6AK5 クリスタルOSC 。 A16.5M  B18.5M  C20.5M  D22.5M(2倍)  E24.5M(2倍)  F14.5M  G16.5M  H18.5M   I20.5M  J22.5M(2倍)  K24.5M(2倍)  L26.5M(2倍)  28.5M(2倍) 30.5M(2倍)  クリスタルの2倍オーバートーン発振はどれほどの基本波成分が出るだろうと思ったら 全く 出ない。拍子抜けというか 意外というか こういうものなんでしょうか?
出来の悪い第3コンバーターに接続してみると 比較的ノイズも少なく高感度らしい。SSGで 1μVでも充分出力があるので いけると思われます。国際放送やアマチュア無線なども受信 出来ます。

ここでまともなアンテナが無いことに気付く。私は無線をやりません。 屋根に登って 逆Lアンテナもどきを建てました。実際接続して驚きました。外来ノイズの 多いこと アンテナを接続したところ 感度は非常に良くなりましたが ノイズはさらにに 多くなりました。

写真の第3コンバーターは 6BA66BE66BA6 を使っていますが  周波数変動がひどくて 実用にならないと判断した為 電池管 1T41R51R5 で作った物を採用しました。 しかしまだ充分とはいえないようです。

第1第2コンバーターは電池管では 性能不足と思われましたので 6BA66BE66AK5 の組み合わせです。
しばらくテストを繰り返すうちに 飽きてきましてしばらく棚上げとなりました。 基本に戻って いわゆる通信型受信機を作りたくなりまして 以前掲載していただきました 高2中3受信機です。 これは半年以上かかりました。

(写真は高2中3受信機)
持って生まれた凝り性にはこまったもので 中身はともかくケースに懲りすぎてます。 IF増幅、BFO回路、検波回路などを検討しました。 ここでも局発の変動はあるのですが 電源を入れて30分ぐらいするとあまり変動しないよう です。コイルを シャーシーの下に入れたのが 良かったのかもしれません。 しかし一番上のバンドは ギヤー比の関係で 同調しづらいです。

(写真は高2中3受信機シャーシ上部)
IF増幅 AF増幅も電池管で作りました。

IF増幅は 6BA6 など AFは 6AV66AR5 などでも良いのですが ケース内部の温度を上げたく なかったので電池管を採用しました。1S4 はいくらか暖かくなります。
IFTは トランジスタ用を2個ベークライトの筒に入れたものを銅箔で巻いた物です。 (以前ラジオに使ったものと同じです)

BFOコイルは 同じくトランジスタ用のIFTを巻きなおしたものです。
[3] 高2中3受信機が完成すると また15バンド受信機を思い出しまして 重い腰を上げました。 さて第2、第3コンバーターは 曲がりなりにも出来ていますから 第1コンバーターに取り 掛かりました。 第2コンバーターと同じように 真空管を外に出したデザインにしました。

Aバンドにコイル1組、Bバンドに1組、C, D, Eバンドで1組合計3組のコイルと2連バリコン1個 で 0,52MHz〜1.7MHz、1.6MHz〜4.2MHz、3.6MHz〜10.2MHzに同調。 受信同調-6BA6-RF同調-6BE6-第1IF(高周波トランス)局発 6AK5 クリスタル12Mhz バンド切替は リレーを使用。組み立ててみたがいくらか感度が悪いようです。よく見ると かなりバリコンの羽が汚れている とりはずして洗浄してみると だいぶ感度が上がったよ うです。オークションで手に入れた中古品ですから無理も無いことです。

第1、第2、第3のコンバーターを手動で合わせて受信すると 地元の放送局が受信できます。 実に感動的で 初めて作ったトリプルスーパーが うまく動作したわけですから嬉しいこと 限りなし。この時第3コンバーターの周波数が反対向きですから 隣の局を受信するにも 一苦労ですが まあ嬉しくて仕方が無い。

しかしこのコンバーター同士のトラッキングをどうしようか。 1kHzを直読したい、第1、第2コンバーターはサーボモーターで連動したい、この2点は譲りた くない。第3コンバータの目盛りを10回転の渦巻き目盛りにして 10回転のポテンションメー ターを取り付けて アナログ的な同調電圧を取り出したらどうか。

しかし取り出した電圧が そのままトラッキング用の電圧になるわけではない 何らかの加工をして15バンド分のトラ ッキング電圧を作らなくてはならない さらに第1、第2コンバーターの両方だ。 目盛り板は目盛り書きが大変そうで また精度がかなり悪くなりそうです。調整がずれた時 は果して元に戻せるか? 後々厄介なことになりそうです。

ではデジタル表示はどうか 第3コンバーターは周波数が反対でしかもIF周波数分を差し引 いて さらにMhz台はバンド切替SWと カウンターの0.9999から1.0000に成った時に表示を 1MHz分アップしなければならない。これでまた頭を抱えることになる。しかしデジタル表示 の方がいくらか楽かもしれない。
トラッキングデーターは 局発周波数から最低発振周波数を差し引くと0〜最大周波数まで の値が得られるので それを適当に分周してメモリーのアドレスにすれば デジタルメモ リーに入れたトラッキングデーターを使うことが出来そうだ。


写真はシャーシ内部
[4] こんなわけでデジタル表示に決めました。 カウンターをどうするか PICで作るか?  参考にするためにいろいろなホームページを見ま したが 都合の良いものがあるわけない 少しはやったことが有るが こんな複雑なことを やる自信が無い まして他人様のプログラムを見て 自分の都合に合わせて書き直すなどは とても出来ない。

この上はカウンター用のLSIを使うしかない。カウンター用のLSIはほとん どが製造中止品になっていて まともな店では手に入らない。しかし何とか手に入れないと 計画が頓挫してしまいます。

しかしいい時代になりました、オークションです。幾つか種類が見つかりました。 今のうちに買っておこうと 使いもしないLSIを沢山買い込み データーシートを見比べて TC5070に決めました。Mhz表示の部分はバンド切替SWとTC5070とPICで作り  またTC5070を都合よくコントロールすることと メモリーアドレスを作る為に もう1個PICを使うことにし ました。

木製ケースの製作

  今回はあまり凝らずに 成り行きに任せたデザインです。 中心右側に 大きなスペースがあり 少々間が抜けてしまいました。ここはまた何かで埋 めたいと思います。
木製のケースは 音が柔らかく 妙な共振音やビリつきも無く好きです。 電池管でも ゼニスのラジオのように かなり大きな音が出ますので充分実用的です。

その他
スプリアスの発生については かなりの強さで発生しているところが 3箇所ほどあります。 何とかしたいレベルが5箇所ほど その他はSメーターがわずかに振れるくらいで アンテナ を接続すると増えた雑音の為にかき消されて BFOをかけるとかすかにビート音が出るくらい のものが 10箇所程あります。第2コンバーターの同調を3連バリコンにしたらかなり改善し たかも知れません。第1コンバーターの後に12MHzのトラップを入れたほうがいいかももしれ ません。

強いスプリアスは第1局発の12MHzとの干渉によるものです。ダブルスーパーのFバンド以上 は 目立つスプリアスはありません。また発振波形もひずみを少なくすることで 高調波同士 の干渉も少なくなりそうです。デジタル回路から出る物は ほとんどありません。 初めて設計製作した受信機としては それなりに満足しています。

周波数の安定について勉強したいと思います。このままでは面白くない。 スプリアスの発生についても 勉強したいと思います。 さらにこれを改良して レベルアップしたいと思います。

【以上解説は製作者の湯本さん】 メールは  まで。
(2011年2月22日)
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