単球スーパー
単球FMラジオ
(自作)
単球FMラジオを作ってみました。
3極5極複合管 6U8A を使ったレフレックス・スーパーです。
単球FMラジオ 回路図
ラジオの仕組み
3極部をカソード入力の自励コンバータとして、FM 放送周波数を 1,700kHzに変換します。
5極部で中間周波増幅をした後ゲルマニウム・ダイオードでスロープ検波し、
AF 信号を再び5極部で増幅をしてスピーカーを鳴らす、いわゆるレフレックス動作としています。
5極部には単純な AGC が付いています。
整流はシリコン・ダイオードによる倍電圧整流です。
部品
汎用部品で組み立てました。
ローカル AM 放送の電波が飛び込まないように、シールド効果のあるケースを用意しました。
IFT-A 5球スーパー用 ANTコイル
IFT-B トランジスタラジオ用 OSCコイル
T-1 出力トランスとして 100V:3V のトランスを流用
T-2 TOYOZUM I 6.3V-0.5A
T-3 東栄 100V-110V-115V-70mA
調整
ケース内のスペースの三分の一は電源関係が占めています。
このケースはドライバーやはんだごてが入りにくく、サブシャシをその都度外して作業しました。
6U8A の5極部の調整を先に行います。
IFT-A、IFT-B を 1,700kHz に調整します。
6U8A の5極部はシールドケースを使用した場合 Cp-g の値が十分小さいこともあり、
意図しない発振などはまったくありませんでした。
ANTコイルは 1.6mm のスズメッキ銅線を7ピン mT管を芯にして 3回巻いた空芯コイルで、
中点をカソードタップとしました。
アンテナのリンクコイルは同じく 2回巻き。
OSCコイルは同じく 3回巻きです。
ANTコイルは、配線した状態で電源を OFF にしてディップメーターでおよその調整をします。
周波数の低い方はコイルの長さを伸縮させて調整し、周波数の高い方はセラミックトリマで
調整しました。
OSCコイルは発振させてディジタル・ディップメーターでおよその周波数を把握しました。
ANTコイルと OSCコイルの周波数の差が 1,700kHz近くになると、
スピーカーからサーっというホワイト・ノイズが聞こえてきます。
コイル同士の結合以外の原因による再生、または一種の超再生なのか良くわかりませんが、
この現象のおかげで大幅にゲインが上がっているようです。
ピーっという発振に移行することはありません。
ホワイト・ノイズがバンド全体で聞こえるようにコイルとトリマを調整します。
3mほどのビニル線をアンテナとしてバリコンを回していくと、ところどころで
ホワイト・ノイズが小さくなり、放送波らしきものが聞こえてきます。
放送波の音量が大きくなるように、コイルとトリマを調整します。
この状態では音がかなり歪んでいますが、慎重にコイルとトリマを調整すると大幅に改善します。
さらに IFT-B のコアを回して同調をずらすと歪が少なくなっていきますが、
代わりに音量が小さくなります。
特定の放送波だけならば、サーっというノイズが完全に消え放送波がほとんど歪まない状態まで
調整できるのですが、今度は別の放送波がうまく聞き取れなくなるため、
根気強く調整する必要があります。
現状は3m程度のビニル線アンテナを使用して、K-M I X(静岡FM 79.2MHz-1kW)と
NHK FM静岡(88.8MHz-1kW)が受信できます。
このラジオのようなスロープ検波の場合、ダイヤルでの選局は慎重に行う必要があり、
最大音量の点の近くのノイズ、歪の無い点を探り当てることが肝要です。
そうすれば5球スーパー並の音質、小型トランジスタラジオ並の音量で聴くことができます。
単球FMラジオ定格表
型式 | 単球レフレックス・スーパー |
受信周波数 | 76MHz-90MHz(設計目標) |
使用真空管 | 6U8A (Philips ECG) |
感度 | - |
電気的出力 | 40mW(推定) |
電源 | 100VAC |
消費電力 | - |
スピーカー | 7cm ダイナミック |
形状 | 200x110x170mm |
重量 | 1.92kg |
製作年月 | 2011年8月製作 |
10年前に製作した単球2バンド・レフレックス・スーパー
に続いて、カソード入力の自励コンバータ回路を考案、試作したのがこのFMラジオです。
あたかも綱渡りをするかのごとく微妙なバランスで動作しています。
回路、コイル、コンデンサ、抵抗を少しずつ変更しては調整するという作業を1か月半ほど
続けて、ようやくここまで完成しました。
しかし局部発振の電波の漏れの問題など、まだ改善すべき点が残されています。
(2011年8月7日初稿)
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